複雑・ファジー小説
- Re: 妖退治屋 いざよい ( No.2 )
- 日時: 2014/07/12 15:34
- 名前: 蜂蜜 (ID: MLDU0m30)
:其の弐:間章
とある屋敷——十六夜家の屋敷——で、空は目を覚ました。
とたん、霧が集まるように斑毛が現れ、数珠がじゃらんと鳴る。
「あいかわらず遅いね。あー、暇だ暇だ。守神は暇すると死んじゃうんだよ、わかってる?」
「もうとっくに死んでるだろ・・・。暇して死ぬのなんて聞いた事ないし。」
空はまだ起きない。
斑毛はいらいらとしっぽを振った。
「ていうかさ、今日、妖退治屋の集まりだよ。いざよいは空一人しかいないでしょ?」
「あ!」
ガバっと飛び起き、空は固まる。文字通り。
そして少々ひきつった笑みを浮かべ、もう全て投げ出すように仰向けに寝転がった。
「忘れてた・・・よし、さぼろう。」
「決断早!でもさ———」
そして数分もたたずに口論勃発。
結局、十六夜家のほこりにかけて(いやみ)遅れても出席することとなった。
+ + +
一方、集会所・・・。
部屋は薄暗いが、締め切った障子を誰も開けようとはしなかった。
暑くもなく、寒くもない、過ごしやすい気温。
大柄な男が口を開いた。
「全員・・・いや、いざよいは来ていないが、はじめることにする。」
一間に集まった30、40ぐらいの者たち。
皆男性で成人しており、空のような若い女はいなかった。
「まぁ、子供一人おらんとも問題ないだろう。」
どこからか、声が上がった。
「いや、いざよいは長く続く退治屋なのだから———」
「子供だが、退治数は誰よりも多いぞ。」
「だが———」
「しかし———」
それに反論する声もまた、居場所はつかめない。
ざわめきは水面の波紋のように広がり、たちまちのうちに収集がつかなくなった。
上に立つ物の声も届かなくなった頃・・・
それは、空中に現れた。
白い毛がうねるように輝き、それと同時に黒髪の少女も降り立った。
場が、しん、と静まりかえるほど、美しいものだった。
「移し身の術・・・斑毛か。いざよいだな?」
「はい、遅れて申し訳ありません。」
「ついさっきまで寝てて・・・いたたたたたた」
空は真顔で斑毛の耳をひっぱる。
真顔で。
すごい真顔で。
まとめ役の者はひきつった笑みを浮かべる。
「えー、いざよいの者もそろったとして———」
空があいた場所に座った・・・
そのときだ。
「!」
「ああ・・・次から次へと。」
その場にいた全員がなにか感じ取ったように伏せていた顔を上げた。
空もまた、ゆっくりと目をあける。
「あやかし・・・今回のはちょっと違うと思うけど。」
周りの者が皆外へ飛び出す中、空はボソッとつぶやいた。