複雑・ファジー小説
- Re: 妖退治屋 いざよい ( No.5 )
- 日時: 2014/07/13 21:22
- 名前: 蜂蜜 (ID: MLDU0m30)
:其の参:かまいたち
「お待ちしておりました、十六夜様。」
空の足が止まった。
なにしろ、倒そうと刃を向けていた妖怪に、待っていた、と言われたのだから。
周りの妖退治屋も、ぽかんと口を開け放している。
「空様・・・ですよね?私はかまいたちの水華と申します。本日は空様と主従関係をかわしに参りました。」
場がざわめく。
空はけげんそうに顔をしかめ、斑毛は素知らぬ顔で空中をぐるぐる回っていた。
主従関係———。
あやかしの呪いを修めている者と、人間の封印術を使える者の、限られた者だけが交わせる、一種の上下契約。
あやかしは人間に呪いをかけ、人間はあやかしを封印する。二種の力がぶつかりあい、人間の力が勝ったとき、あやかしを封じる封印具が生まれるという。
それをあやかしに付けると主従関係が認められる。
斑毛がその例だ。
「・・・なんでだい?あやかしにしてみれば、いいところなんてないだろ?」
「ええ、ですが、自信の安全は認められます。」
それまで黙って聞いていた斑毛が、空の周りを舞うようにおりてきた。
「手順は知ってるよ。教えてやってもいいけど。」
「!・・・斑毛、本気かい。」
「お願いします!私は・・・本当に、空様のあやかしになりたいんです。」
斑毛がにたりと笑った。その笑顔に空はげっそりとした様子でうなだれる。
—こうなったら斑毛は留められない。
「じゃあ今回の集会はお開きだ!いいよね、お偉いさん?」
口を挟めずに突っ立っていたまとめ役は突然声をかけられたことに驚きながらも、承諾した。
+ + +
空は札がべたべた貼られたなぎなたを見て、隠れてため息をついた。
「・・・こんなことならあのまま寝てればよかった。」
「大丈夫です、本気で行きますから!」
「・・・こっちが負けたらどうするつもりなんだよ、まったく・・・。」
「そのばあいは空が死んで十六夜家が滅びるだけだよ。空の代でおわっちゃうねー!」
「なに楽しそうなの、斑毛。封じるぞ。」
もう封じられてまーす、といわんばかりに封印具をじゃらじゃらならされた。
場所は十六夜家の屋敷の庭。
広く、周りに結界が張られているので町人に影響が出ることはない。
早いほうがいいとのことで、すぐに斑毛の指導が始まった。
手順、其の一。
封印術の詠唱をする。なお、噛めば死ぬのであしからず。
空はぶつぶつ文句をたれながら、なぎなたを構えて詠唱をした。
札がぼんやり光り始め、それは次第に空の体にまで移っていった。
手順、其の弐。
あやかし側が呪いをはじめる。ここで封印の詠唱に負ければ即死。
「死がつきものだなぁ・・・。」
「はい、そこなにも言わない!」
水華は手を複雑に絡める。
空は体になにかドロッとしたものが流れ込んだ気がした。それはひどく不快で、自然となぎなたを握る力が強くなる。
手順、其の参。
そのまま続けるべし。双方自分の最大の力を出し切る。
何時ぐらいたっただろう。
ふと、空は視界が傾くのを感じた。黒い霧が押し寄せたように世界に靄がかかり、黒く染まっていった。
———ああ、真っ暗だ。
空は、泥沼にはまったように、ずぶずぶと意識を失っていった・・・。
=お知らせ=
増やすつもり無かったんですけど、用語が増えてきたので>>0に用語集つくります。
物語中で紹介はするようにしますが、わからない知らないなどの言葉があった場合上見たらだいたい載ってるかも・・・。
あと、水華の紹介も載せます。