複雑・ファジー小説

Re: 妖退治屋 いざよい ( No.7 )
日時: 2014/07/17 16:58
名前: 蜂蜜 (ID: MLDU0m30)

:其の伍:赤鬼と青鬼 弐



「十六夜ですってえええ!?」


「・・・そういってるだろ、大声だすな!」

夜に沈んだ暗い町。
ほとんど店じまいした店が並ぶ大通りを、赤鬼と青鬼はあるいていた。

人がおきないか、と心配して怒る青鬼に、でもでも、と赤鬼もまけじと声を発する。

「あの十六夜よっ!あの事件にはわたしたちも関わってたんだから!」
「ああ——そうだったな・・・で、どうする。さっきも言ったが、近くにそいつの屋敷があるんだ、行くか?」
「行くに決まってるじゃない。あんがい、妖気が薄まってるのもあの空とか言う子供のせいかもしれないわ。」

きらめく星と月だけが、そんな二人を見下ろしていた。


  + + +


赤鬼は植木からそうっと顔を出した。
ここは十六夜家の屋敷。とてつもなく広く、とてつもなく堅い結界が張ってある。
当然のごとく赤鬼も跳ね返された。

「いたーい・・・やっぱりだめね、結界が張ってあるわ。」

額を押さえる赤鬼の言葉に、青鬼は少し驚いて言葉を返す。

「はねかえせないのか?お前の力じゃあ簡単だろう。」
「私が赤鬼様の式紙だってわかんないの?無理矢理跳ね返すなんて無理だわ。」

そういえば赤鬼の式紙だっけか、と青鬼ははたと気がついた。

「・・・なあ、式紙なら、式紙に戻れば結界も関係ないんじゃないか。」

その言葉に赤鬼はばっと顔を上げ、顔を輝かせた。

「それよ!青にしちゃいい考えじゃない。」
「いっつも一言よけいなんだよ、お前は。」

早速足から影に戻っていく。
それは異様でもあり、
美しくもあった。

完全に影の塊に戻った赤鬼———式紙はごうごうとうごめき、左右に広がりながら十六夜家の敷地内に入っていく。
その様子を青鬼はあきれたように見ていた。

空と水華の主従関係の儀が、終わりに近づいた時だった。