複雑・ファジー小説
- Re: 妖退治屋 いざよい ( No.9 )
- 日時: 2014/07/19 15:07
- 名前: 蜂蜜 (ID: MLDU0m30)
:其の六:赤鬼と青鬼 参
ふ、と冷たい風が瞼をなでたところで、空はバッと飛び起きた。
手元においてあったなぎなたを持ち構え、『それ』に突き出す。。
「あらあら、ずいぶんと良いおもてなしじゃない?」
『それ』はそう言って口を閉じると、おだやかに笑って見せた。
空の攻撃はかわしてある。
「ここらへんじゃ見ない服装で。」
「ええ、貿易船から少し拝借を。まあ、着られるのは人間に化けているときだけで・・・。」
『それ』———赤鬼の式紙は、悪寒の走るような笑いを空に向けた。
先ほどの笑いとは無縁の、真逆な、黒い笑み。
月光に照らされ黒く浮かび上がった赤鬼の影が、一瞬にしてふくれあがった。
強い妖気が押し寄せ、目を閉じる。
次に目を開けた時———赤鬼の背中からは、魑魅魍魎の類の物が突き出ていた。
「赤鬼様の変化をとくと、破けちゃうの。」
+ + +
屋敷の裏の裏。しかしそれだともとの場所に戻ってしまうのでそのまた裏。
「空様がいない!なんで!」
先ほどと違い、首に数珠のような物を付けた水華は、庭をいらいらと歩き回っていた。
そして後ろでゆうゆうと浮かんでいた斑毛をにらんだ。
「ちょっとそこのオオカミもどき!こんなときになに楽しそうなんですか!」
「あ!?ちょっと空がいるときより口悪くなぁい!?」
「私は空様に付いていんです!十六夜家に付いているあなたとは空様とのつながりは深いの!」
「へ、へぇえー。こっちのが長くいるけどね?ひよっこめぇ!」
・・・言い争い勃発。
「だれがひよっこですか!私は水華!す、い、か!」
「ふんだっ、野菜の名前の癖に!」
「や、や、野菜ーーー!?」
「おい、ちょっと。」
「西瓜なんてっ!ひどい、乙女なのに!」
「乙女だって?妖術使えて、無理矢理空に主従関係築かせたのに、なにを言うか!」
「聞けよこら」
「うっ・・・よ、妖術使えてもいーでしょう!戦える女子ってやつです!だいたい、補助的な攻撃しかできないあなたに言われたくないです!」
「はあああ!?」
「てめぇらちょっと黙れぇ!!!」
「そっちこそ黙っててくださ—————え?」
「わーーー!侵入者だ!」
突然———といっても、さっきからいたのだが———かけられた声に、斑毛と水華は飛び上がる。
「よお、俺は青鬼ってんだ。」
青鬼は植木の上に手とあごをのせながら、不適にほほえんだ。