複雑・ファジー小説

Re: 流浪のガンナー【代筆、建て直し】 ( No.2 )
日時: 2014/07/20 09:39
名前: ミュウ (ID: gOBbXtG8)

『人影……?』

 ニックは砂漠の遥か向こうから、銃を手に持ってフラフラと歩いてくる少年を見つけた。
 さらにその少年は彼から見て、年の頃約12歳という幼い子供に見えた。加えて、遠目でも衰弱しているのが見て取れる。
 彼は焦った。この荒野の環境は、例え旅に慣れているからといえど、幼い子供にとっては非常に厳しい。
 即ち、連れも無しに子供が1人で行動するのは危険であり、場合によっては命をも落としかねないのだ。

「おい、ちょっとここを頼む」
「やれやれ、また行き倒れかよ?」
「どうやらそうみたいだな」

 いつ倒れてもおかしくない。そんな結論に至った彼は、もう1人の門番にこの場を任せて走り去った。

   ◇ ◇ ◇

 思った以上に距離があったらしく、ニックは少年の下へたどり着くまで少々時間を要した。

「おーい、大丈夫かー?」
「あ……やっと、人に……あ、え……」

 少年は彼の呼びかけに反応すると、どこか安心したかのような表情を浮かべ、そのまま地面に倒れ伏した。
 既に活力は切れていて、少したりとも残されていなかったらしい。

「しっかりしろ」

 少年の歩いてきた方角からして、国境からデザート街まで町は1つもない。
 その上かなりの距離があり、熟練の冒険者でも国境からデザートまで歩いて来るのは厳しい。
 よくもここまでやって来れたものだ。ニックは感心すると、倒れた少年を抱え上げた。
 デザート街には先のような地理的な問題で、行き倒れがよくやってくる。
 彼も数年門番を務めているので、このくらい慣れたものだ。

『さて、とりあえず俺の家に運ぶとするか』

 彼はは来た道を、また戻り始めた。


   ◇ ◇ ◇


 自宅のベッドに少年を寝かせたニック。
 すぐさま同僚に連絡を入れ、代理の門番を任せた。
 今はこの少年の看病をする必要がある。

「ふぁあ……あれ? ここは?」

 机の明かりが灯っただけの仄暗い部屋で、少年は目を覚ました。
 彼が寝ている客人用のベッドはふかふかとしていて、少年は比較的気持ちの良い目覚めを迎えれたようだ。
 腕には、脱水症状を治療するための点滴が施されている。

「よう、起きたか?」
「え、えっと……貴方は?」

 少年は状況把握が出来ずに混乱しているらしい。
 ニックは銃のメンテナンスを中断し、彼に歩み寄る。

「俺はニック。ニック・シャドウだ。ここはまあ、俺の家ってわけだ」
「は、はぁ……」
「さてと、俺はお前にいくつか聞きたいことがある。ちょっと質問に答えてもらえるか?」
「あ、うん」

 ニックはメモ用紙とペンを持ってきた。

「まず、お前の名前は?」
「えっと、ロイ・アクターレ」
「ロイ、か」

 その少年"ロイ"の名を、彼はメモ用紙に書きつける。

「じゃあ次に。お前は今までやっていたことを覚えてるか?」
「えっと、確か砂漠を歩いていたような……?」
「おっと、覚えているみたいだな」

 続いて、記憶に障害は見られない、と書き足す。
 そして次の質問に移ろうかニックが思ったとき、ロイが素っ頓狂な声を上げた。

「って! そうだ! 何で僕ここにいるんですか?」
「あー……」

 そういえばそうだ。
 このロイという少年は恐らく、自分が何故知らない人の家にいるのか、理解が出来ていない。
 単純な話が、まだ状況把握が出来ていなくて混乱しているのだろう。
 そうなればこのまま一方的に質問を続けるより、ある程度の経緯を話したほうが事の展開は早い。
 ニックはメモの手を止める。

「お前、砂漠でぶっ倒れとったぞ」
「僕が砂漠で?」
「あぁ。そこで俺がたまたま、お前を拾ったわけだ」
「あ、ありがとうございます。こんな行き倒れを……」
「いや、気にするな」

 ニックは笑ってロイの頭を撫で、満更でもなさそうな彼の顔を見てから質問を続けた。