複雑・ファジー小説
- Re: 三千世界の軌跡-Hope of glow-キャラ募集 ( No.11 )
- 日時: 2014/07/23 20:23
- 名前: キコリ ◆yy6Pd8RHXs (ID: gOBbXtG8)
雄介は大急ぎで、それでいて落ち着いたように教室に入る。
既に朝のホームルームが始まりかけていたが、まだ挨拶前とのことで、どうやら何とか間に合ったらしい。
これも全てこういった結果であることを知っているからこそ、落ち着いたように行動が出来る。
「はやく席つけ。転校早々遅刻など、このワシが許さんぞ」
それでも担任は頭が固く、退職一歩手前の老人である。
雄介はまた溜息をついた。ハニーの事といい、何故こうも朝っぱらから疲れなければならないのだろうか。
毎度の事ではあるが、こればかりは流石に慣れない。いい加減に早く慣れたいところだ。
やがてホームルームが終わり、教室は再びガヤガヤと騒ぎ始めた。
ホームルームが終わってからは、授業開始まで5分くらいの時間がある。所謂トイレ休憩のようなものだ。
そうして本でも読もうかと手を伸ばし、序に時計を見る雄介。
『そろそろだな』
時計の針を見て、雄介は一度手に持った本を再び手放した。
授業開始前3分になったとき、自分は裏世界にワープしてしまうと彼は知っている。
皆には気付かれないよう、臨戦態勢に入った。
"裏世界"
それは現実世界のパラレルワールドのようなもので、中は迷宮のような構造をしている。
裏世界の見た目は現実世界と変わらない。違うところは、魔物というべき化け物が跋扈していることと、人がいないこと。
何の前触れもなく突然空間に"歪み"が発生したら、そこは裏世界への入り口であることを告げている。
特徴として厄介なのは、人を勝手に取り込んでしまうことだ。
脱出するには仕掛けを解いて先に進み、発生したその裏世界を司る強敵——所謂ボスを倒すしかない。
雄介は、このタイミングで歪みができることを知っている。
だが彼は、ここで歪みから逃げるような真似はしなかった。
過去の因果で一度、歪みから逃げたことが原因で取り返しのつかない事態を招いた経験がある。
「ゆ、雄介! おい! ボサっとしてんな! 歪みだぞ歪み!」
クラスメイトが急かす中、雄介はその場から動こうとしない。
ただゆっくりと、手の内にカードのデッキを握るだけだ。
デッキとなったカードは彼の武器であり、身を守る盾でもある。
人間が裏世界へ飛んでしまうことが珍しくない昨今、人類は何かしら身を守る術を身につけている。
そのうちの魔法という存在は人類が発明した技術であり、超能力は人類が進化して生まれた存在といえる。
「歪み? それがどうした。歪みとか、さっさと解除すればいいだけの話だろ」
雄介は、引き裂かれて出来た青い空間に吸い込まれていった。