複雑・ファジー小説

Re: 三千世界の軌跡-Hope of glow-キャラ募集 ( No.21 )
日時: 2014/07/27 00:01
名前: キコリ ◆yy6Pd8RHXs (ID: gOBbXtG8)

 その後雄介と朱音は、無事に裏世界から脱出することに成功した。
 脱出して出てきた先は、曽我宮学園の高等学校棟にある体育館のピロティー。
 風がいい具合に抜けていく構造になっていて、吹き抜けるそれが心地よい。
 そんな見慣れた光景を見て安堵してか、雄介は全身の力が抜け、その場に膝をついた。
 朱音が見兼ねて、彼の様子を視察し始める。だが特に何もない。おそらく、ただの疲れだろう。

「だ、大丈夫?」
「問題ない。疲れただけだ」
「そ、それならいいんだけど……えっと、ここは……?」
「あぁ、そうか。お前、この学校の生徒じゃないんだったな」

 そうだ。朱音は曽我宮学園の生徒ではない。
 だから彼女はここにいるべきではないし、いたらいたで不法侵入になる。
 雄介は立ち上がり、朱音に向き直った。

「ここは曽我宮市だが、家まで帰れるか?」
「そ、曽我宮? ごめん、知らない」
「そうか……」

 既に雄介は、朱音が何処に住んでいるのかを知っていた。
 言うまでもなく、彼は未来から来たからである。
 だが、彼女を送っていくようなことはしない。何故ならその選択は、過ちの1つなのだから。
 雄介は仕方ないので、職員室へ行くことにした。
 時間的には3時限目の真っ最中。人目はそうはないだろう。


   ◇ ◇ ◇


「失礼します」
「一体どうし……!?」

 数少ない教師全員が雄介を振り向く中、一切の例外なく彼らは驚いていた。
 彼の隣にいる少女が誰か、気になるらしい。

 雄介は教務に事情を説明し、一先ず朱音の身柄を預けることに成功した。
 これから彼女には様々な質問が飛ぶのだという。彼女は雄介に礼を言い、そのまま別れた。


   ◇ ◇ ◇


 授業中にいきなり教室の扉が開けば、必ずや全員がそちらに注目するに違いない。
 雄介は入るのに躊躇いが生じたが、ここで入らねば、貴重な単位を落とす破目に陥りかねない。
 仕方なく、彼は教室に入ることにした。折角なら、景気良く派手に行こうではないかと思いながら。
 扉に手を掛ける。

 ガラガラッと途轍もなく大きな音を立て、扉はしっかりと開かれた。
 比較的古い扉なので、音はさらに大きいものとなる。
 中でノートをとっていた生徒、寝ていた生徒、黒板に文字を書いている先生。
 そのうち一切の例外なく、みんなが驚いて、いきなり入ってきた雄介のほうを見た。
 先生に至っては、チョークを落としてしまったらしい。

「ゆ、雄介!?」
「————よう。無事裏世界から戻って来れたぜ」
「う、裏世界にいたのかね、君は」
「えぇ、その通りです」

 半ば自暴自棄気味に雄介は応え、そのまま席へ着席し、机に突っ伏した。
 寝てしまっては折角の単位も履修出来たことにはならないのだが、もうその時点では単位を気にしていなかったのだとか。
 その後は授業が終わるまでずっと眠っていたと、後に彼のクラスメイトの1人が語っている。