複雑・ファジー小説
- Re: 三千世界の軌跡-Hope of glow-キャラ募集 ( No.22 )
- 日時: 2014/07/27 09:23
- 名前: キコリ ◆yy6Pd8RHXs (ID: gOBbXtG8)
授業が終了してクラスメイトに起こされた雄介は、眠い目を擦りながら学生会館まで来ていた。
学生会館には購買や食堂、生徒会室や各種部活動の部室などが集まっており、毎日のように生徒で溢れかえっている。
元々賑やかいところが苦手な雄介だが、今朝は弁当を忘れてしまったので、仕方なくこうしてここへ来た。
背に腹は変えられないのである。
「さーてと」
購買でパンだけ買って屋上へ行くか、ここの食堂で昼飯を済ますか。
その2択で迷っていた。だが実際のところ、正直どちらでもいいのが彼の率直な感想である。
食堂は賑やかなので五月蝿ければ、かといって屋上へ行くのも面倒。
教室はというと、基本的に飲食を禁止されている。何故教室が駄目なのか、一向に晴れる気配のない疑問である。
結局は"移動が面倒"という理由で、食堂で昼飯を済ませることにした。
「おや? 君は確か、雄介君だったか」
食事券を買うために列に並んだとき、聞き覚えのある声が雄介の鼓膜を揺らした。
見れば背後に、いつの間にか彼の先輩に当たる"比賀雅臣"が彼を覗き込んでいた。
雄介が頭(こうべ)を垂れる。
「あ、久し振りですね」
「そうだね。っていっても、3ヶ月前かな?」
「まあ、その辺りでしょうか」
2人は意気投合し、久しく共に食事を摂ることとなった。
◇ ◇ ◇
雅臣と雄介が勉学の話について花を咲かせていると、またしても聞き覚えのある声が雄介の鼓膜を揺らす。
しかしその声は、雅臣にとっては聞いたことのない声であった。
かなり明るく、少しロリっぽく、どこかふんわりとした声。雄介は一声聞くだけで、誰だか分かった。
「ハニーか」
後ろではハニーが、ソフトクリームやメープルクリスピーなどの甘味系を沢山乗せたお盆を持って立っていた。
「やっほー、雄介君! 今からお昼?」
「いいや、もう終わりかけなんだが」
「う〜、残念だなぁ。今度一緒にお昼食べようよ!」
「あぁ」
「わーい!」
満面の笑みを浮かべているハニー。
彼女はそのまま、つれて来ていた友達と共に食堂のどこかへと姿を消した。
雅臣がハニーの不思議な人柄に首を傾げている。
「彼女は?」
「えっと、あいつはハニー=アーナツメルツっていう奴です。いっつも俺に絡んでくるんですよね」
「あはは、そうか。女の子の思いは大事にしてあげてね」
「先輩、人事だと思って……」
◇ ◇ ◇
今日も1日が終わり、雄介はさっさと岐路についていた。
「あれ? 雄介君?」
「あ?」
その帰りがけにて。ふと彼は、見覚えのある少女と相対した。
現れたのは、今日職員室で身柄を預けた本人"榊原朱音"である。
朱音は目の前にいる人物を雄介と認めるなり、彼に飛びついた。
「あはは、さっきぶり〜」
「そうだな。ってか、その制服……」
「あー、これ? 似合ってる?」
「似合ってる……が、一体何故」
微笑みながら雄介から離れ、その場でくるりとターンをする朱音。
彼女は、真新しい曽我宮学園指定の制服を着ていた。
「曽我宮学園に転校することになったの。これからよろしくね!」
「!?」
想定外の返答が返ってきた。
雄介が今まで過ごしてきた因果の中で、朱音が曽我宮学園に転校するということは一度たりともなかったのだ。
やはり、今回の因果は何かがおかしい。
転移前の記憶が曖昧なこともそうだ。件の裏世界で、見覚えのない青年の殺されかけたこともそう。
今回の因果は、きっと何かがあるに違いない。
これまで以上に酷いバッドエンドを迎えるのか、それともハッピーエンドを迎えるのか。
どちらにせよ、気を引き締めておくことに越したことはないだろう。
「どしたの?」
「いや、何でもない」
「えへへ、そっか。じゃあ、一緒に帰ろう?」
「おう」
朱音は雄介の手を、半ば強引に引き始める。
だが、その足は数歩も進まないうちに止まった。
「あーでも! その前にひとつ、聞きたい事があるの」
「?」
突然彼女の目つきが真剣になる。一体何を聞くのだろう。
そう思っていると次の瞬間、雄介は大いに驚いた。まるで的の真ん中を射抜いたかのように。
何故そのことを知っているのかが謎で、暫く硬直してしまうほどに。
「雄介君、未来から来たでしょ?」