複雑・ファジー小説

Re: 三千世界の軌跡-Hope of glow-キャラ募集 ( No.45 )
日時: 2014/08/05 15:51
名前: キコリ ◆yy6Pd8RHXs (ID: gOBbXtG8)

『イメージ……そして、願いの力……』

 朱音を見据えるジャドウに、背後で休憩を取る雄介。
 2人を傍目に彼女は、再び眼の色が碧く変化する。錬金女王の力が、その実に宿った証である。
 今の彼女に敵はない。錬金術という名の大いなる力を前に、あらゆる生物が平伏すのだから。

「私は、雄介君を守りたい。もう、守られるだけの存在じゃないから」

 凛とした声でそう言い放つ朱音の前に、再び件の水晶が形成された。
 それを見るや否や、ジャドウは再びトランプを取り出してそれを水晶玉を目掛けて飛ばす。
 しかし、ジャドウが飛ばしたトランプは水晶玉に命中することはなく、作り出された硝子の盾によって弾かれた。
 硝子の盾を作り出したのは朱音ではなく、背後に立つ雄介のカード。
 怪しげな笑みを湛えて、彼はそこに立っている。

「朱音。俺も守られるだけの存在じゃないからな」
「——ふふっ、さっきまでボロボロだったくせにっ」
「言うじゃねぇか、朱音。じゃあ改めて、覚悟しろジャド……ウ……?」

 笑いあう2人は今一度、気を引き締めてジャドウに向き直る。
 しかしジャドウは雄介たちではなく、ましてやリンでもない全く異なる人物と相対していて、2人は思わず固まった。
 2人の目線の先では、道化師のような恰好をした成人男性が1人、ジャドウと相対している光景が繰り広げられている。

「貴様……」
「はいはいーい! そこのお2人の愛情を引き裂きに来ましたよー! ヒャハハハハハッ!」

 この時のジャドウからは、今までに雄介が経験したことのないほどに只ならぬ殺気が発されている。
 しかし彼の目の前で笑っているその道化師は、そんな殺気など恰も気にしてないかのように笑っているだけだ。
 雄介のこめかみがピクリと脈打つ。今まで経験してきた因果で、その道化師のような男は見たことがない。
 そして、どのような行動を取ればいいのかが分からない。
 懐に、強力な武器を所持しているように見えるのだから。例えるならば、原子爆弾のような自爆手段など。

「っ!」
「きゃ!」

 突然その男はジャドウから視線を外すと、指先から妙な光線を放った。
 飛んで行く先は朱音の胸。危険を察知した雄介は彼女の前に立ち、魔法のよる障壁を展開する。
 ぱきん、と小気味良い音を立てて、光線は全く別の方向へと飛んでいった。

「おや、命中しませんでしたか。これはお強いですねぇ」

 これにより光線を防ぐことは出来たが、油断してはならない。
 雄介が魔法障壁を展開していた刹那の間にも、ジャドウはその奇妙な男と交戦を開始していた。

「クレープ、あくまで俺の邪魔をするつもりか」
「いえいえ。邪魔する価値もないのに、貴方の邪魔をするなんて滅相もない。ただ、愛し合っているご様子であるあのお2人の愛を完膚なきまでに壊しに来ただけですよ? えぇ、それ以外に理由などありませんから」

 クレープと呼ばれた男に対し、ジャドウは本気を出している。この2人、相当仲が悪いらしい。
 雄介はこの隙に、朱音をつれてこの場から逃げることにした。まずは一刻も早く、この裏世界を封印する必要がある。
 その際、いつの間にか目を覚ましていたらしいドギーだが、単独でどこかへと去っていってしまった。
 リンもこれに便乗して、逃走を図ることにした。ここにいては危険だと判断して。