複雑・ファジー小説
- Re: 三千世界の軌跡-Hope of glow-キャラ募集 ( No.57 )
- 日時: 2014/08/13 23:01
- 名前: キコリ ◆yy6Pd8RHXs (ID: gOBbXtG8)
翌朝、雄介は朝早くからバス停にいた。
今日からシルバーウィークであり、旅行へ行くことになったのである。
メンバーは朱音、ハニー、雅臣、ロコの4人と、雄介の後輩にあたる"ニコ=フラウツ"を入れた合計6名。
久々の旅行に、雄介は内心ワクワクしていた。
今まで辿ってきた因果の中で、このようなことは滅多になかったからである。
しかし、彼は男女合同、しかも宿泊先の部屋も同じということに気を揉んでいた。
元はと言えば朱音が元凶であり、シルバーウィークに何をしようかという話題で旅行へ行こうという話になったのはいいが、彼女がメンバーを適当に決めすぎた所為でこういう結果となった。
それに便乗してニコを誘った雄介も雄介だが。
『やれやれ、何か嫌な予感しかしねぇ……しかし、皆よくも乗り気になれたな』
普通なら、男女とも部屋が同じである宿泊旅行は避けたがる人が多い。
ロコ辺りはともかく、雅臣など、都合の良し悪し以前に聞く耳さえ持たない気配がある。
彼はそれを快く、是非とも参加したいと言っていたのだ。だから嫌な予感しかしないのである。
「雄介くーん!」
「お、来たか」
のんびりとベンチに座って待っていると、遠くからハニーの声がした。
「えいっ!」
「うわっ!」
彼女は全力疾走を以って、立ち上がった雄介にとびついた。
驚く雄介だが、彼は冷静に飛び込んできた温もりを抱きとめる。
『!?』
そして、荷物を考慮してもまだまだ軽い彼女の体重にさらに驚いた。
ちゃんと飯を食っているのだろうか。そう思ってもおかしくないほどに軽いのである。
今だって彼は、ちゃんと彼女を受け止める態勢を構えた。
だが、いざハニーが飛び込んだら、そんな態勢を作る必要性などなかったなと思えるほどに軽すぎたのだ。
『どうなってるんだ、こいつの体は』
しかし雄介が見ている限りでは、彼女は常に甘いものばかりを食べている。
一応、栄養失調ではないのだろう。
だが、今はそんなことを考えている場合ではない。
「ってか、早く離れろ」
「えー、何で? 雄介君あったかいからもうちょっとくっついてたいんだけど……」
「いいから離れろ! ジャンケンしてやるから!」
そう。雄介はハニーに早く離れて欲しかった。
別段、彼はハニーの事を嫌っているわけではない。寧ろ嫌う理由がないし、嫌いたくない。
ただ、もしこんな光景を朱音に見られたらどうなるだろうか。
結果は決まっている。旅行前だというのに、この場の空気は修羅場が発生することによって最悪な雰囲気となるのだ。
それだけは避けたい。今旅行を楽しむためにも、今後の未来のためにも。
◇ ◇ ◇
そうしてやがて、全員の集合が完了して一同はバスに乗り込んでいた。
だが、結構盛り上がっていることに変わりはないが、一部の空気はかなり微妙。
あの後雄介は、何とかハニーに離すことには成功したのだが、彼女はそれでも雄介の近くから離れようとしていない。
それで朱音が、若干ヘソを曲げているのである。
勿論ハニーがその事に気付いているはずも無く、雄介はこの板挟み感に苛まれていた。
「いやー、ハニーちゃん今日も可愛いね!」
「も、もう。ヘアスタイル崩れちゃうからあんまり撫でないでよぉ」
そんなハニーは今、ロコに頭を撫でられている。
口では文句を言っているが、見た感じでは満更でもなさそうだ。
そのお気楽ムードを見て、雄介はなんともいえない気分になる。
「ヤキモチかい? 雄介君」
「違います。えぇ、断固として」
そんな雄介を見ていた雅臣は、彼にしては少し珍しく、下品な笑みを浮かべて雄介をからかった。
するとからかわれた雄介は若干焦り、あらぬ誤解を招いてはならないという妙な使命感に駆られて全力否定する。
このとき彼は気付いていなかったが、彼の3つ隣にいる朱音が、彼に色んな感情が篭った目線を送っていた。
因みに、彼女と雄介に挟まれているロコとハニー。やはりというか、この状況に気付かずに話をしている。
雲行きが怪しくなってきたな。雄介はそう思った。