複雑・ファジー小説
- Re: 三千世界の軌跡-Hope of glow-キャラ募集 ( No.9 )
- 日時: 2014/07/23 09:35
- 名前: キコリ ◆yy6Pd8RHXs (ID: gOBbXtG8)
雄介は落ちてくる落ち葉を払いのけながら、早足に学校へと向かった。
木枯らしが吹くこの時間軸では、雄介は転校したての転校生という立場にいる。
転校したてな所為か、彼はまだ友達を作っておらず、誰とも打ち解けないまま1人だけ存在が浮いている。
元々、彼の性格が災いしてクラスの仲間とは馴染めそうにないのだが。
学校にいる生徒の大半は明るくて気さくな人が多い反面、クールな性格をしている人もいる。
中でも彼は異例と言えるほどのクールキャラであり、それ故に1人浮いているのだ。
「雄介君、おはよう!」
「あぁ、おはよう」
それでも、構わず彼に構ってくる人物も少なくない。
中でも、金髪と碧眼が印象的な"ハニー=アーナツメルツ"というイタリア生まれの少女は転校生という存在を物珍しそうにしていて、気になっているのか、彼女は雄介の側にいることが多くなった。
そのハニーは何をしているのかと言うと、雄介に毎日のように話しかけ、じゃんけんの勝負を挑んでいる。
「じゃんけんしようよ!」
「断る」
「えぇ〜、いーじゃん別に」
「——ちっ、仕方ねぇな」
今日も今日とて、じゃんけん尽くし。
雄介の口からあからさまな舌打ちが響いたが、ハニーは全く気にしていない様子。
思わず雄介は溜息をついた。
「じゃー、いくよ! 最初はグー、ジャンケンポン!」
彼女はじゃんけんが好きで、雄介だけに留まらず、不特定多数の人々にジャンケンの勝負を挑んできた。
しかも運と勘が優れていて、彼女がジャンケンで負けることは滅多にない。
だが彼女は、雄介にだけは負けてしまう。今の勝負もハニーがパーなのに対し、雄介はチョキで勝つことが出来た。
当然である。何しろ雄介は、曲がりなりにも未来からやってきた人物だ。
ハニーがどのタイミングのジャンケンでどれを出すのか、全て覚えているのだ。
「君強いー! 反則だよぉ」
「知るか。お前が弱いだけだろ」
「ぶーぶー!」
ハニージャンケンでないだけ、まだマシか。雄介はじゃんけんを彼女と交わす中で、ずっとそう思っている。
そのハニージャンケンと言うものは、まずハニーが高確率で勝つ。
すると彼女が出したジャンケンの種類より、グーなら岩石落とし、チョキなら斬首、パーなら身体の破裂のいずれかが相手に発動するという、何とも恐ろしいジャンケンなのである。
彼女のこの能力を、彼は何よりも恐れてきた。
元々ハニーは雄介に危害を"全く"加えないのでいいが、彼女が敵に容赦なくそれをやっているところを見ていると、傍観者でもどうしても首筋には冷や汗が流れるというものだ。
「あ、学校に遅れちゃう! 早く行こうよ!」
「おう。ちと急ぐか」
ハニーは年齢からしてまだ中学生で、雄介は既に高校生。だが通う場所は一緒だった。
曽我宮高等学校の正式名称は"国立曽我宮学園"といい、小学校から大学、さらには各専修学校までの学び舎が全て一緒になっているという、世にも珍しく世界的にも有名な学校なのである。
ハニーと雄介は偶然にもこの学校に通っていて、朝はほとんど毎日、一緒に登校している。
じゃんけんでのんびりし過ぎ、時間がなくなってしまった。
2人は走って学校へ向かった。