複雑・ファジー小説

Re: 創始のカルネージ ( No.9 )
日時: 2014/07/28 23:17
名前: 石鹸糖 (ID: 60TA9nBF)

訓練が終わる頃にはもうとっくに日は沈んでおり、辺りは暗くなっていた。
訓練が終わると和馬は、疲労で重い体を酷使して階段を駆け上り、すぐに屋上へと移動する。
すると屋上には、満面の星空が広がっていた。不浄物でまみれた心を浄化するような、そんな感じの光景。
この場所は、和馬がナーヴ加入初日に見つけた素晴らしい星空スポットなのである。

屋上で星空を見て心を癒していると、背後から声をかけられた。

「そこの君、星が好きなのかい?」
「ああ、星を見てると落ち着くんだ」

話しかけて来た人物は、所謂歴戦の戦士という言葉が似合う男性だった。見た所、和馬よりキャリアは長い様なので自然と姿勢がよくなる。

「そうかそうか。夜空には色々な物があるからな……。ところで、見ない顔だけど、新人?」
「先週から働き始めた下っ端だよ。名前は水津園和馬。」
「へえ。俺はロイ=ヴァルケ。新人くん、頑張れよー?」

お互い自己紹介を済ませるとロイの大きな手で和馬の頭をわしゃわしゃっと撫でる。出会って数分しか経っていないのに、和馬にはロイのことが父の様に思えた。

その後は、お互い話しやすい星座や月の話で盛り上がった。星座の知らない豆知識なんかも知って、和馬は満足だった。

そうして、過ごしていると屋上に続く部屋のドアが開いた音が聞こえる。和馬が後ろを振り向くと、そこにいたのは昼間、和馬に悪態を付いてきた青年だった。
青年は和馬の存在に気付くと舌打ちをし、嫌そうな顔をしてそのまま屋内へ戻って行く。
和馬は青年の行動に不服そうな顔をすると、ロイに小声で尋ねた。

「なあ、さっきの……」
「ああ、アイツが気になるのか? 名前は確か……青光真二。新人イビリの青光、って結構有名だぜ」
「ふーん……。俺、昼間アイツにボロクソに言われたんだよ」
「はははっ、新人なら誰もが通る道さ。アイツにも事情はあるんだろうけどな……。じゃ、俺はそろそろ寝るわ。明日、時間が空けば支部内を見て回ると良いよ。じゃあな」

ロイは軽く手を振ると屋上を後にする。
ロイの言うとおり、明日訓練が終われば一通り見学でもしよう。
和馬はそう考えながら、冷たい風を背に受け寮へと戻った。