複雑・ファジー小説
- Re: グランディオーツストーリー【クレイグ士官学院リメイク】 ( No.2 )
- 日時: 2014/08/10 21:49
- 名前: 凡 ◆IBmmrNHoC. (ID: gOBbXtG8)
道中、ロイは何人か自分と同じ赤色の制服を着た人物を目撃した。
クレイグ士官学院は平民と貴族の区別をつけるため、平民は黒、貴族は白の制服を着用することを義務付けている。
しかし、ロイを含めた数人は違っている。他の制服とデザインが全く異なる、赤色の制服を着ているのである。
何故自分を含め、白でもなく黒でもない"赤"の制服を着ている人がいるのだろうか。
気になったロイだが、とりあえず頭の片隅に放っておくことにした。どれもいずれは分かることなのだろうから。
そんなことを考えているうちに、ロイはいつの間にか、入学式が行われる講堂の前についていた。
凛々しい面構えで新入生を迎える講堂の顔は、これから始まる学院生活の全てを物語っているようにも見える。
ロイは、この学校で始まるこれからの学院生活を想っていた。
「新しい学院生活が始まるんだな……みたいなこと思ったか?」
「?」
凛とした声がロイの鼓膜を揺らす。
隣にはいつの間にか、茶髪ショートの女子生徒が立っていた。
「まあな。気を引き締めないと、みんなに置いてかれると思って」
「はは、生真面目だなアンタ。あたしはパスカル・ピックフォードだ。アンタは?」
「俺はロイ。ロイ・セレスティアだ。よろしくな」
"パスカル・ピックフォード"と名乗ったその少女は、ロイと硬い握手を交わす。
よく見ればパスカル。ロイと同じ赤い制服を着ているではないか。とても可愛らしく、それでいて動きやすそうである。
赤い制服という共通点で話しかけてきたのかどうかはともかく、ロイは彼女に制服について聞いてみることにした。
「そういえば制服なんだけど、俺達って何かあるのか?」
「あぁ。それなんだけどさぁ、あたしも気になってたんだよな……」
2人は制服について色々と話をしつつ、講堂へと入っていった。
◇ ◇ ◇
学園長である"ローガン・ウィンダリア"がステージに現れたのを合図に、入学式は始まった。
その学園長は年老いているが、発する威厳はかなりのもので、身長も2メートルあってもおかしくないくらい高い。
ロイとその隣に座るパスカルだけでなく、入学生全員がその覇気に圧倒されていた。
その所為か講堂は静まり返っていて、学園長の声だけが響いていた。
「クレイグ士官学院の教訓は、心を育て、自らを研く。この言葉の意味を、どうか自分たちで理解してほしい」
その言葉を合図に学園長の講和は終わり、同時に入学式も幕を閉じた。
生徒達ざわめき始めたころ、可憐な容姿と少し幼い声を持つ生徒会長からの指示が入る。
「では、予め配られた入学案内書を元に各自自分の教室へ向かってください」
それを聞いた皆は一斉に立ち上がった。
だが、ロイは立ち上がれなかった。手元にある入学案内書に、自分のクラスが書かれていないからだ。
どうやらパスカルも同じらしく、2人はどうするべきか戸惑った。
頭を捻っても、答えは出てこない。学院側のミスとも考えにくい。というよりそれは考えられない。
ロイはふと、周囲を見渡してみた。するとやはり何人か、自分のクラスが分からずに困っている様子の生徒がいる。
それと偶然か、その困っている人たちは全員赤い制服を着ていた。
数を数えてみると、ロイとパスカルを入れた合計6人が困っているらしい。
「はいはい、赤い制服の子達は注目しなさ〜い」
「?」
すると不意に1人の女性教官が、手を叩いて赤い制服を着ている生徒の注目を集めた。
6人の視線が教官に集まる。その教官はかなり容姿端麗で、空色の長髪に輝くような金の目が印象的である。
その上体型も、男の理想を全て具現化したような怪しき肢体を持っている。
艶美な唇が開き、言葉が発される。
「私はアリア。ちょっと覚えておいて頂戴。君たちにはちょっと、オリエンテーションみたいなのをやってもらう予定よ」
「お、オリエンテーション?」
聞いて、ロイをはじめとする皆は戸惑った。
入学早々オリエンテーションなど、誰からも聞いていないし調べてもないのだから。
何のオリエンテーションが始まるやら。ロイがそう思ったときである。
「アリア教官だったか。その前に、俺の疑問に答えてもらおうか」
ふと、赤い制服を着ている金髪の男子生徒が立ち上がった。
身勝手で荘厳なその振る舞い。恐らくは貴族なのだろう。その場にいる全員がそう思った。
そんな振る舞いを前にしても、アリアと名乗った教官は特に何も言わず、その生徒の要求を受け入れる。
「この場にいる赤い制服の生徒……俺達は一体なんなのか、答えてもらおう」
その疑問は、彼だけでなく皆が抱いている疑問である。
送られた制服を着てクレイグ士官学院にみれば、制服が他の人とは違って今この様だ。
逆に、疑問を持たないはずが無い。
「————まあ、そうね。そのほうが、みんなもすっきりするでしょうから」
アリアが皆の様子を見て納得した。
明らかに渋々といった様子が見られたが、誰も何も言わない。早く答えが聞きたいのだろう。
アリアはそんな皆を一瞥し、溜息をついてから事の真相を話し始めた。