複雑・ファジー小説

Re: グランディオーツストーリー【クレイグ士官学院リメイク】 ( No.5 )
日時: 2014/08/13 21:55
名前: 凡 ◆IBmmrNHoC. (ID: gOBbXtG8)

「いやーしっかし、あのアリアとかいう教官も人が悪いよなぁ……」

 飄々とした大鎌を持つ青年"ガイ・シックザール"は、溜息をつきながらアリアの事について愚痴り始めた。
 そんな彼に、遺跡の探索で彼のパートナーとなった魔道杖を持つ少女"コレット・メイソン"が首を傾げる。

「どうしてですか?」
「どうしたもこうしたも、こんなオリエンテーションがあるんなら先に言ってくれりゃいいのによぉ……」
「ま、まあまあ。落ち着いてください。ね?」

 鎌を持っていないほうの手で、ボサボサな金の短髪が生えている後頭部を掻き毟るガイ。
 そんな彼を宥めるように、彼とはまた違う長い金髪を持つコレットが、目にかかった髪を払いのけてながら笑った。
 ガイは彼女の笑みを、黄緑色の瞳で不愉快そうに見た。表情も少し歪んでいる。

「やれやれ、いいよな首席学級委員長は。元来真面目な性格だし、そんなこと気にせず済むみたいだし?」

 コレットは士官学院の試験にて優秀な成績を収めていて、0組の首席学級委員となっている。
 因みに副委員長はパスカル。パスカルはこの学院に唯一推薦で入学しているほどに賢く、人柄もいい。
 しかし推薦入試という過程を経ているので、一般入試で彼女の実力が結果として残っているわけではない。
 そのため彼女は、副委員長という立場に収まっている。

「真面目とかは……関係ないんじゃないでしょうか?」

 コレットは何やら不機嫌そうなガイを、キッと空色の瞳で睨みつけた。
 本当に関係ないのかねぇ。そう言いたそうなガイだが、これ以上何を言っても無駄だなと思い、溜息をつくだけだった。
 だが実際、コレットの言っていることは些か外れている。
 現にガイは、入学して1日も経ってないというのに制服を着崩している。
 つまるところ、性格というものはどの状況においても現れるのだ。

「まーいいや。お堅い学級委員殿には、何を言っても無駄っぽいからな」

 諦めたらしいガイが、踵を返してそそくさと先へ進み始める。
 だがコレットはそれを許さず、彼の腕を引っ張って阻止した。
 彼女の豊かな胸に、ガイの腕が当たる。

「待って下さい」
「何だよ」

 ガイは先ほどと同じく、かなり不機嫌な面構えをしている。
 それでもコレットは臆することなく、しっかりと疑問を言い放つ。

「何で私が悪者になってるんですか?」

 聞くなりガイは、思わず「はぁ?」と零した。
 誰もコレットが悪いとは言っていないはずである。
 被害妄想もいいところだな。ガイはそう思った。

「別にそんなこと言ってねぇだろ。こうなったのはアリア教官の所為だろ? お前は悪くない」
「だったら、言い方をもう少し考えてください。私は貴方の事を、もう赤の他人ではない、大切な仲間だと思っています。こんなくだらないことで、変な誤解をしたくはありません」

 論破されたガイと、論破したコレット。
 流石は、馬鹿と天才の差だろうか。こう言った場面でもその差が窺えるとは、彼は思いもよらなかった。

「あーもう、悪かったなぁ大した語彙も持ち合わせてない馬鹿な俺で」
「————」

 実際、ガイは馬鹿だ。
 この士官学院にはやっとの思いで入学できたわけであって、お世辞にも賢いとは言えない。
 否定できずに黙っているコレット。ガイは不快感を覚えた。

「もういいや。先行くぞ」
「1人で行っては危ないでしょう? 私も行きます」
「ご勝手にどーぞ」

 その後ガイたちは、終始無言で遺跡の最深部まで到達したそうだ。
 そして彼らの行く手を阻む魔獣は、一切の例外なく、コレットの支援なしでガイが討伐した。
 コレットは何となく、ガイがこの学校へ入学できた理由が分かった気がした。