複雑・ファジー小説

Re: わかりあうための闘い【感想ほしいです!】 ( No.101 )
日時: 2014/09/20 20:10
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

カイザーsid

私は弟のハニーと共に、大会場に向かって走っていた。
現在、我々の戦績は2敗。既に2人も大切な友を失ってしまった。
この地球の未来のためとはいえ、共に遊び、共に暮らし、共に闘った友同士で闘わなければならないというのは、本当に悲しい。なぜ、このような悲劇が起こってしまったのだろうか。
だが、あれこれ考えても、起こってしまったものは仕方がないとしか言いようがない。
早くこの悲しみを終わらせるためにも、会長のマインドコントロールを解かねば…
そう考え、大会場に突入しようとしたそのとき、唐突に背後から声がした。
「その必要はないぜ」
振り返ってみると、水色のリーゼントに闘志あふれる瞳、水色の革のジャンバーを着た青年が立っていた。年齢で言えば21歳ぐらいだろうか。着こんでいるジャンパーからははちきれんばかりに鍛え上げられた胸板が覗いていた。彼は片頬の口角だけを上げたニヒルな笑みを浮かべ口を開いた。
「あんた、カイザー=ブレットだろ?お目にかかれて光栄だ」
彼は私の名前を知っていた。人を疑うのはあまり言い事とは言えないが見ず知らずの相手でもあるし、もしかすると、敵の可能性も否定はできない。取りあえず、私は彼が何者なのかを訊ねる。
「きみは誰だね?」
すると彼は頭を掻いて笑いながら、
「俺は空。その名の通り空のように自由な男、そしてスター親衛隊の隊員だ」
スター親衛隊。それは会長が有事の時に召集し、彼のためならば命を投げ出すことも厭わないとも言われるほどの高い忠誠心を持った会長直属の親衛隊。見ず知らずの彼がまさかその一員だったとは…それにしても、マインドコントロールを解く必要がないとは、一体どういう意味なのだろうか。思案していると、彼がケタケタと腹を抱えて笑い声を上げた。
「会長さんはマインドコントロールなんか最初からかかっちゃいねぇってことさ。ま、とにかく弟と一緒に俺のバイクに乗りな」
彼はいつの間に用意してあったのだろうかバイクにまたがりエンジンをかけ、私たちに乗るように促しヘルメットを渡した。
「あんたらを守るために、この命くれてやる!」
彼はグッと親指を立てて宣言する。
それにしても、バイクの3人乗りなんて大丈夫なのだろうか。
「俺は空のように自由な男、法律なんて気にはしないぜ」
私たちを乗せたバイクは、まるで風のように早く疾走し始めた。



彼がバイクを走らせてしばらくすると、後方から何やら馬の蹄のような音が聞こえてくる。単調な心地よいリズムを刻むそれは、次第に大きくなってきた。
「…チッ。とんでもねぇ追手がきやがった」
彼が舌打ちをしてつぶやいたので、私は彼のバイクの側面に取りつけられているバックミラーを眺めた。するとそこに映っていたのは、テンガロンハットをかぶり、西部開拓時代の保安官の恰好をして暴れ馬に器用に乗りこなす、少々迷惑な私の友がいた。
どうしていつも、彼はこうもタイミングが最悪な時に現れるのだろうか。ため息をつき点を仰ぐと、正面で運転していた彼が突如行動をとった。
「おっと、コイツはちょっと相手しなくちゃいけねえみたいだな。少し運転頼んだぜ、カイザーさんよ」
彼はバイクから跳躍し、ロディの首筋にまたがり、そのまま彼に華麗な首四の字をかけて失神させると、馬の頭を踏み台にしてジャンプし、上空で回転すると再び元のバイク前座席におさまった。
あのロディをあれほどの身のこなしで一瞬で撃破するとは…恐るべき男だ。
彼の実力に少し驚かされた事に気づいたのか、彼は横目で私を見て、
「これぐらいで驚いてもらっちゃ、後で見せる俺たちの神業には失神してしまうだろうな」
「ウム。そうかもしれないな」
彼にそう語りかけながら、大空を見つめ、心の中で祈った。
みんな、今助けに行くぞ、だから、もう少しだけがんばっていてくれ!