複雑・ファジー小説

Re: わかりあうための闘い(感謝しています) ( No.109 )
日時: 2014/08/29 09:29
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

安瀬sid

メープルと葵の活躍で俺たちに、一筋の希望の光が舞い込んだ。

さっきまではあわやメープルたちも敗北するかと思ったから、本当にホッとした。

嬉しかったのは、この闘いで星野のマインドコントロールが解けたことだ。

ダメージを負ってしばらくは闘えなさそうだが、戦線復帰したら力強い戦力になるに違いない。

と、俺はここでヨハネスを見てずっこけそうになった。

コイツは仲間が命を捨てる覚悟で闘っているのに、食い物のことしか頭にないのか!

いちごシロップをかけたカキ氷を美味しそうに頬張るヨハネスを見て、俺は本当にコイツのパートナーになってよかったのだろうかと、今更ながら疑問に思った。

そのとき、ジャドウと交戦中の王李のリングがクローズアップされた。

「フフフフ…俺の弟子とは思えない情けない有様。嘆かわしいですなあ」

奴は傷だらけでボロボロになった王李を足蹴にする。

彼は何も言い返すことができない。

王李の奴、あんなに威張っていたから強いんだろうと思っていたが、それほど強くないのか?

そんな疑問が頭を掠めたとき、カキ氷を食っていたヨハネスが口を開いた。

「王李くんはスターレスリングジムの中ではかなり下の実力ですが、並の能力者と闘えば実力者と呼ばれるレベルではあります。これは彼の師匠であり対戦相手であるジャドウさんが強すぎるだけです」

彼の言い分に俺は納得した。

確かにあのジャドウと言う運営委員は底知れぬ殺気が漂っており、只者でないことは一目でわかる。

「彼は、人間じゃありません。宇宙人なんですよ」

う、宇宙人だと!?

信じられなかったが、ヨハネスの瞳は嘘をついているようには全く見えない。

「スターレスリングジムのメンバーである運営委員の半分は神に匹敵する宇宙人ですよ。特に不動さんとジャドウさんはあのカイザーさんと同等の強さを誇りますから、王李くんがあそこまでズタボロにされるのも当然です」

カイザーさんと同等…

いくら王李が強いと言ってもカイザーさんと同じ実力がある相手と闘うなんて、自殺行為だ…

「彼は最初からそのつもりで彼に挑んでいるんですよ。自分が犠牲になり、仲間に彼の手の内を少しでも見せることで、自分の代わりに彼を破ってほしい…これが普段見せない彼の本心なのですから」

あいつ、なんていい奴なんだ。

次闘う奴の犠牲になるなんて、普通の精神じゃできるわけがねぇ…

「これが彼の強みです。彼はいつだってこの方法で、仲間に勝利への架け橋を繋げることで貢献してきたんです。そして今回も…」

「お前達はそれでいいのかよ。仲間なんだから、助けるのが当たり前じゃねぇのかよ」

俺はまるで仲間を見捨てるとでも言わんばかりの、ヨハネスの非情な態度に怒りが沸き立ってくるのを感じた。

だが、その怒りは彼の次の一言で鎮火してしまった。

「もし今、僕たちが助けに言ったらプライドの高い彼の事、その場で自害しますよ。彼は『試合で味方に助けてもらった場合、自害する』と自らの掟を自らに定めていますから」

「な…ッ!」

目を見開く俺に構わず、奴は新たに追加注文されたミルク金時を頬張る。

ヨハネスはスプーンを止め、妙に真剣な顔つきで言った。

「見守るのもまた友情ですよ」

見守るのもまた友情…心の中で彼の言った言葉を繰り返す。

これは、所謂無言の友情という奴なのかもしれない。

すると突然、満身創痍だった王李に、変化が起きた。

何度も蹴り上げるジャドウの足を掴み、押し倒すとアンクルホールドをかけたのだ。

「ほう…どうやら、お前の本気のエンジンがかかってきたようですなあ…」

ジャドウはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「当たり前ですよ。僕はあなたの弟子なんですからね!」

次回予告
怒涛の王李の反撃開始!?