複雑・ファジー小説

Re: わかりあうための闘い ( No.115 )
日時: 2014/08/29 16:13
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

安瀬sid

ついに試合開始のゴングが鳴った。

こっちは俺から先に行くことになった。

あのジャドウという奴、テレビじゃあまり大きさがわからないけど、間近で見ると相当な高身長だということがわかる。

「俺は196センチ。安瀬よ、お前の身長は何センチですかな?」

俺は170センチだから…26センチも差があるのかよ!

ってか俺より小柄なヨハネスはどうやってコイツと闘うつもりなんだ?

「フフフフ…人の心配をしている場合ではないのではないかね、安瀬よ」

いきなり奴がパンチを放ってきた。取りあえず今は、能力を使わずにできる限り対処するしかない。できれば能力は奥の手としてとっておきたいからだ。

奴の右ストレートをギリギリで避けることに成功したが、次の瞬間、俺の腹が激痛に襲われた。

「グハッ…!」

腹を見てみると、ジャドウの左ボディーブローが見事にヒットしていた。

血を吹きだし、片膝をつく俺に奴は容赦なく蹴りを浴びせる。

「嘆かわしいな」

倒れている俺にまるで槍のような威力のエルボーを胸にお見舞いさせる。

「グヘッ…!」

たった1発食らっただけなのに、なんなんだこの全身が痺れる衝撃は…!?

これが、スターレスリングジムの力なのか!

「俺は王李の師匠として、彼には俺の悪の美学を叩き込んだつもりだった。だが、どうやらそれは俺の自己満足にすぎなかったということが、先ほどの試合で証明されたのだよ」

「それは…どういう意味だ?」

「フフフフ…立ちあがればその意味を教えてやろう」

言われるがままに立ちあがると、今度はニードロップを食らわされた。

「さて、お前に教えてやるとしよう。これが俺の提唱する悪の美学と言うものだ!」

奴は腰にかけてあったサーベルを引き抜き、柄の方で俺の顔面を殴り始めた。

幸いこれが柄の方だからいいものの、もし奴があの鋭い切っ先を俺に向けて振るったらそのときは間違いなく終わる。

そう考えると、奴の無表情な顔が一層恐ろしく感じられる。

「フフフフ…安心するがいい、安瀬よ。俺は武器を持っていないお前に対し剣の刃の部分で攻撃しようとは思わん。あくまで正々堂々クリーンな悪。それがこの俺ジャドウ=グレイだ」

フッと奴が視界から消えたかと思うと、いつも間にか奴は背後に回り込み、俺をコーナーポスト目がけてバックドロップで投げた。

ゴワーン!

まるで正月の除夜の鐘に似た音が鳴り響いたと同時に、頭が割れるような痛みに襲われ意識がもうろうとし始めた。

「安瀬さん、タッチです!」

どうにか意識を保つと、一生懸命手を伸ばしているヨハネスの姿があった。

「フフフフ…そうはいかん」

ゴン!

「あ……」

俺の股間に奴の蹴りが命中した。

あまりの痛さに俺はマットに転がりのたうち回る。

「これは失礼。偶然にも足が当たってしまったようですなあ…」

「てめぇ…!」

痛みを堪え拳を振り上げ向かって行くと、今度は奴の2本の指が俺の目に食い込んだ。

「目が…目がぁ!」

「目がどうかしたのかね?フフフフ…これでタッチはできまい」

金的攻撃に目つぶし…クソッ、コイツなんて反則野郎だ!

「俺は反則などしてはいない。反則か正攻技の区別もつかぬド素人には、顔面を砕いて差し上げよう。フフフフ…」

顔面を物凄い握力で握りしめられる。確かリンゴを潰すのに120キロの握力が必要だったはず…だが、コイツの握力は化け物だ。

このまま行くとリンゴかザクロみたいに俺の顔面が潰されちまう。

「この試合は反則自由のデスマッチ。したがって普段なら反則となる行為も反則ではないのだよ。フフフフ…」

「それはいいことを聞きました!」

「グオッ!?」

不意にヨハネスがリングに乱入し、奴の後頭部に蹴りを叩き込んだ。

その一発に奴の手が緩み、俺はアイアンクローから脱出するとヨハネスにタッチしてリングから出た。

「おのれ…ヨハネス=シュークリーム!」

「ジャドウさん、今度は僕と勝負です!」

次回予告
ヨハネスとジャドウの因縁が明かされる!