複雑・ファジー小説

Re: わかりあうための闘い ( No.119 )
日時: 2014/08/30 13:04
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

葵sid

わたしは医務室で休憩をしていました。

メープルさんと星野くんは先ほどの死闘のダメージがかなりあるらしく、廉道先生の判断で入院することになりました。

わたしはメープルさんが基本的にひとりで闘ってくださいましたので、それほどダメージもなく、闘える状態なのですが、広い休憩室にあるテレビで中継されている試合を観戦していますと、みんなの闘っている敵がいかに強いのかがよくわかります。

わたしも闘いたい…でも、一体誰と闘えばいいのでしょう。

それにもしかすると、まだまだ敵は残っているのかもしれない。

そう考えますと、ここはむやみやたらと行動を起こすより、医務室で静かに体力を温存しておいたほうがいいのかもしれません。

廉道先生から貰ったお茶を一口飲んで、ため息をつきました。

そもそもわたしがこの大会に参加したのは、純粋に自分の力を試してみたかっただけなのですが、まさかこんなことに巻き込まれるなんて…

これから、一体あと何人の犠牲者がこの闘いによって起こるのでしょうか。

そう思いますと、今テレビで闘っている彼らの姿を見るのが苦しくなってきました。

もう少しわたしが強かったらみんなの力になることができるのに…

「きみは十分に強い。それは私が保証するよ」

隣から声がしたので、驚いて見てみますといつの間にいたのでしょうか、金髪碧眼、豪華な茶色の三つ揃えのスーツを着た男の人が座っていました。

「あの…あなたは?」

すると男の人は微笑んで、

「私はスター=アーナツメルツ。この大会の主催者でスターレスリングジムの会長だよ。ちなみにさっきからずっときみの隣で座っていたんだけど、気づかなかったかな?」

こ、この人が大会の主催者のスター=アーナツメルツさん!?

名前こそ聞いたことがあったのですが、顔を見るのは初めてで、あまりに想像していた人と違っていましたので、わたしは仰天してしまいました。

「あの…失礼ですけど、だいぶお若いんですね。もっと、こう、白髪でおひげの生えたおじいさんのような人かと思っていました…」

「ハハハハハ!意外かね?」

わたしは頷き、本題を訊ねました。

「ところで、どうしてわたしのところに?」

すると彼は再び高らかに笑って、

「ただ暇で来ただけだよ。あと、私の部屋にはテレビがないから、弟子たちの試合を見ようかなと思ってね。そうだ!不動くんとジャドウくんのふたりがいないということは、新しい弟子の育成が隠れてできる!
よし、決めたぞ、きみに私のスター流奥義を伝授させてあげよう!もちろん無料でね。どうかな?」

彼は瞳をキラキラ輝かせて言います。

「えっ本当ですか!?」

この大会で毎年優勝者を出しているスターレスリングジムの会長が直々にわたしに手ほどきをしてくれる—
あまりに願ってもないサプライズが帰ってきましたので、嬉しさのあまり興奮して念を押しました。

「もちろん。でもその前に私のお気に入りの弟子のひとりであるヨハネスくんの試合を見てからにしてもいいかな?」

「はいっ!」

「ハハハハハ!素晴らしく元気で明るい返事だね、さすがはあの廉道先生と素晴らしい勝負をしただけのことはある」

その直後、彼は再びテレビ画面に向き直り、

「見ていたまえ、これからこの試合はとても面白いものになるはずだから!」

次回予告
ヨハネスとチームスーパーの対決、早くも決着!?