複雑・ファジー小説

Re: わかりあうための闘い【夢の対戦カード決定!】 ( No.169 )
日時: 2014/09/12 08:50
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

ルナティクスsid

2階で降りた僕を待ち受けていたのは、ピエールだった。

「ボンジュール。キミが僕の対戦相手であるムッシュールナティクスだね。僕はピエール=ジェントルマン。別名『光の貴公子』。この僕が相手をするんだから、つまらない試合をしないでくれると嬉しいな」

彼は僕にリングに上がるように促した。僕がリングに上がると試合開始のゴングが鳴る。

まず、僕は相手の出方を見るためにここはあえて攻撃をせずに仁王立ちになり、敵が攻撃してくるのを待った。

けれど、彼は一向に攻撃してこない。

彼はただ微笑みを浮かべて立っているだけだ。

「どういうつもりなのかな?きみは攻撃をしないつもりなのかい」

「ムッシュールナティクス。僕は苗字の通り紳士だよ。ここはレディーファーストならぬジェントルマンファーストをしてあげようかと思ってね。きみから先に攻撃してきてもいいよ」

彼はあくまで美形の笑みを崩さない。

この余裕な態度—これは間違いなく罠だ。それは容易に想像できる。

しかし、その罠が僕が攻撃をした後に発動しているのか、それとも今のこの状態が既に罠なのか、それがわからない。

敵の口車に乗って攻撃してしまえば、一体何が起こるのか予測不可能。

この光の貴公子、一体何をやらかすつもりなんだ…?

すると彼はため息をひとつ吐いて口を開いた。

「きみはせっかく僕が攻撃するチャンスを与えてやっていると言うのに、それを不意にするなんて変わっているね。ここはきみのその考えに敬意を表して、僕から先に攻撃させてもらうよ」

その刹那、彼の姿がフッと消えた。

「僕はここだよ」

背後から声がしたかと思うと、首筋に激痛が走った。

見てみると、彼が僕にフライングレッグラリアートを直撃させていた。

「キミはムッシュースターから聞いていなかったのかな?僕はプロレスの腕はスターレスリングジム最低の実力のムッシュー井吹と同等。けれど、それでもきみはついて来られない」

たった一撃食らっただけなのにも関わらず、盛大に吹き飛ばされ、リングの端まで飛ばされた。

倒れ伏している僕を彼は冷ややかな笑みで、

「これが美しき僕と醜いきみの実力差。きみのような一能力者が僕と対等に闘おうなんて、10年早いよ」

「…今の状態ならそうかもしれない。けど、これならどうかな?パワードーピング!」

闇の力で身体能力を増幅させ、敵に向かっていく。

拳を振り上げ殴りかかるが、それを簡単に受け止められてしまう。

「フッ、生ぬるいパンチだね。まるで溶けたチョコレートのようだ」

彼はサマーソルトキックを見舞うが、それを体を反らすことによって辛うじて避ける。

「どうやら、少しはパワーアップしたようだね。まるで生クリームだけをデコレーションしたショートケーキに、大きな苺が乗ったみたいだよ」

「そんな軽口を叩けるのも、今のうちだ!」

僕は闇の力で武器を作り出す技ヴァッフェで二本の剣を作り出し、敵に斬りかかる。

この勝負は時間無制限反則自由のデスマッチなので、武器の使用も認められている。

だから当然ルール違反ではない。

今の彼は腕を後ろに組んで、まるっきりの無防備だ。今なら攻撃が当たる!

彼に思いっきり剣を振り下ろすと、

ガシッ!

「パン切りナイフとケーキカットナイフで僕を倒せると思ったのかな?」

彼は素手で二本の剣を何の苦も無く受け止めていた。

「きみもバカだね。運営委員の試合を見ていれば、僕たちは剣を受け止めることぐらい容易いことを知っているはずだのに。もしかして見ていなかったのかな?」

剣を持つ手に力を加えるが、ビクとも動かない。

「きみの考えは、まるでパイナップルの砂糖漬けのように甘いね」

彼はそのままの体勢で僕の腹に蹴りを炸裂させた。

その威力に思わず剣から手を離して後退してしまう。

剣が敵の武器と化してしまう前に、瞬時に消滅させて、間合いを取る。

「あれ?もうフェンシングはおしまいかい?僕のフェンシングの腕を見せてきみをチョコレートフォンデュのように串刺しにしてあげようかと思ったのに」

彼は急接近して手刀を振るう。

そこで僕は前方に闇の壁を発生させて身を守るブラックウォールを発動させる。

しかし、たちまちヒビが入り、闇の壁があっけなく破壊されてしまった。

「きみの壁はまるで板チョコのようにもろいね」

ただの手刀だけで、今まで誰も破壊できなかったブラックウォールを砕くなんて…

再び彼が間髪入れずに手刀を放ったので、分身を生み出す技、ダミーフェイクで避け、一瞬の戸惑いが生じた隙に膝蹴りを見舞った。

「分身も使えるなんて驚いたよ。だけどそれはあくまで一般レベル。そんな分身じゃ他の人を驚かすことはできても、この僕を驚かすことはできないよ!」

彼は僕の拳を軽く避けて間合いを取ると、

「本当の分身を見せてあげるよ。アン、ドウ、トロワ!」

彼が指を鳴らしたその刹那、僕を囲むように十数体の彼の分身が現れた。

「僕はクッキーのように数多くの分身を生み出すことができる。一回につき一体の分身しか生み出せないきみには勝てないよ」

前後ろ左右全方位を彼の分身に囲まれ、隙がない。

囲んでいる十数体の敵の分身が発する、冷ややかな笑みを見た僕は額から冷や汗が流れ出るのを感じた。