複雑・ファジー小説
- Re: わかりあうための闘い【夢の対戦カード決定!】 ( No.170 )
- 日時: 2014/09/13 08:57
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
ルナティクスsid
「僕はまだ能力を発動さえしていない。対するきみは既に能力を発動し、しかも技を4つも披露している。きみがあとどれだけの技を持っているのかは知れないけど、敵に手の内は見せないほうがいいと思うよ」
彼は分身とデュエットしてそんな事を言った。
確かに相手に手の内を見せないほうが賢明な考えと言えるかもしれない。
けれど、僕には数多くの技がある。それを使えばいいだけの話。
それに冷静に僕の周りを囲んでいる分身たちを眺めていると、一か所だけガラ空きの箇所を発見した。それは—
「上だっ」
「しまった!」
僕は足のバネにありったけの力を振り絞り、分身の輪の中から脱出し、ダークブラスターを次々に分身たちにヒットさせていく。
分身の耐久性は本体には遠く及ばないようで、光線が当たるとすぐに煙になって消えてしまった。
本体はダークブラスターの軌道を素手で弾いて曲げると、黒い笑みを浮かべた。
「なかなかやるね。僕の分身攻撃を破るなんて想定外だよ。これはまるで新触感のケーキを食べている感覚に近いと言えるだろうね……」
僕は彼が少し気押されている隙を逃さず、敵に急接近し、必殺技を繰り出す。
まずスーパーパワードーピングで身体能力を更に大幅に上昇させ、そのまま拳の乱撃を放つ。
「…でも、それだけに残念だね。今のきみの技はありきたりのスポンジケーキのようだよ。拳の乱撃なんて昔の漫画じゃあるまいし、僕には通用しないよ」
彼は会話をする余裕を見せながら、スーパーパワードーピングで発動した乱撃をやすやすと受けとめ、足払いを見舞った。
「拳に集中しすぎて、足を使うことを怠ったようだね。まるで最後のトッピングを忘れたケーキのように間抜けなミスだね」
「うるさい!これで消し炭にしてやる!」
ゼロ距離で黒いエネルギー弾を放つと、爆音とともに彼の顔が煙に包まれた。
やったか?そう思った直後、顔に僅かなカスリ傷を負っただけの敵が平然と立っていた。
「今のはオーブンの温度を間違えてスイッチを押したようなものだよ。温度が低すぎるね。この程度の攻撃で僕を倒すなんて、きみは身の程知らずと言うしかないね」
敵の耐久性のあまりの高さに戦慄を覚えた。コイツ…さすがに強い!
「きみは技が多彩すぎて威力に欠ける。ひとつの必殺技に絞り込んで、それを徹底的に鍛え上げれば僕を倒せたかもしれないのにね。まあ、きみは僕に負けるんだし、そんな事をアドバイスしても意味ないけどね」
その刹那、彼の打ったストレートが僕の顔面にめり込んだ。
激痛と共に顔を押さえた両手にはベッタリと大量の鼻血がついていた。
「きみの実力ってこんなものだったんだね。少し期待していただけに残念だよ」
彼の言葉が鉛のように重くのしかかる。
「世界の帝王になる男が聞いて呆れるよ」
僕にボディーブローを放ちダウンさせると、腹這いになっている僕を滅多蹴りにする。
「きみは所詮負け犬!僕のような完璧なる美しさと完璧なる技を持つ人間にはきみは勝てない運命なんだよ。まるで今のきみはまっ黒焦げになって食べられなくなったケーキのように存在価値がないんだよ」
彼の言葉がまるで剣のように僕の心に突き刺さる。
満身創痍、心も体もズタボロ。
必殺技も破られた…僕にはもう、彼に破られるしかないのかもしれない……
『フフフフ…無様ですなあ、ルナティクスよ』
そのとき倒れ伏している僕の目の前に、ジャドウさんの幻影が現れた。
僕はダメで元々とばかりに心の中で彼と会話をしてみることにした。
『ジャドウさん、僕の苦戦を見て楽しんでいるんですか?』
『フフフフ…それは失敬。俺はお前に今の状態から容易に逆転できるアドバイスを授けようと思って幻影として現れただけだ。お前はわが弟子に素質が似ている。上条雄介と同じく前々から興味を持っていたが、お前の試合や技を見て、亡き弟子の後を継ぐのにふさわしいという結論に至った』
『それはつまり…僕の師匠になると?』
『左様。だからこそこうして幻影としてお前の前に現れたのだ』
『それでアドバイスと言うのは?』
『「闇こそ真の光なり」「色男には恋愛話を利用しろ」のふたつだ。この真の意味が理解できたとき、お前は完全に俺の悪の美学の後継者として相応しい男になるであろう。フフフフ…』
彼の幻影はそれだけ言うと消えてしまった。
本当は言葉の意味を知りたかったけど、仕方がない。
僕はここにきて一筋の逆転の光を見出した。
ストンピングを続ける彼の足を掴み転倒させ、立ち上がって彼との間合いを取る。
「フッ、さっきより生気が増した顔をしているね。死の淵に何か見たのかな」
「ああ、見たよ。僕が見たのは、この試合に勝利する僕の姿だ!」