複雑・ファジー小説
- Re: わかりあうための闘い【夢の対戦カード決定!】 ( No.181 )
- 日時: 2014/09/14 20:08
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
軽井沢sid
「男の子なんだから強くならなきゃ」
僕はあの日、ママにそう言われた。
いつも虐められて泣いていたから、ママはもう少し僕に強くなってほしいと思ってそんな言葉をかけたに違いない。
でも、まさかその言葉が心の中にもうひとつの人格を生み出すことになるだなんて、思ってもみなかった。
心の中に黒い心を持つ僕が生まれてからというもの、たまに精神を勝手に乗っ取られることがある。
そしていつも気が付くと、対戦相手が血まみれで倒れている。
もうこんなことはしたくない。
これ以上人に悲しい思いをさせたくない!
だけど…今の僕は黒い僕からの支配に対抗できずにいる。
試合中は彼に完全に支配されている—。
そう考えると、自分の心の弱さが情けなくなってきた。
もしかするとママは、力の意味じゃなくて、心の意味で強くなってほしいと願ったのではないかと今になって思う。
そして僕はまたひとり、対戦相手であるお師匠さんのお気に入りの弟子のひとりである、ヨハネスさんを血の海に沈めてしまった。
試合開始してしばらくはクリーンに闘うように全力で務めた。
今度こそ悪の自分の支配から抜け出して、正々堂々闘って見せる!
そう自分の良心に誓って試合をしていた。
けれど、心に潜む彼は、だんだんと僕の意識を侵食してきて、気が付いたら彼に自分の体を渡していた。
そして気が付くと、完全に失神していたヨハネスさんがいた。
目を閉じて、血だらけの手になった彼を見た僕は心の中の悪の自分が怖くてそんな自分に対抗できなくて、泣いてしまった。
僕は、なんでこんなに弱虫でいくじなしで泣き虫なんだろう…
ヨハネスさん、試合中のこことはいえ、本当にごめんなさい。
気絶した彼に短い手紙を書いて、彼の着ているインバネスコートのポケットに入れた。
彼が病院で目を覚ました時に気づいてくれますようにと祈って。