複雑・ファジー小説

Re: わかりあうための闘い【奇跡の復活!】 ( No.197 )
日時: 2014/09/20 19:27
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

フレンチsid

雲一つない青い空、眩しい日差しが僕の立っているリングを、温かく照らします。
プロレスで使うリングは、それほど大きいものではなく、意外なほど小さいのですが、僕たちが闘いに使用しているリングは、通常より倍の大きさを指定しています。そうすることで、下から観戦している観客のみなさんやパノラマビジョンにより大きな迫力で映り盛り上がるからです。僕の美学は完璧なる美しさで完璧に相手をしとめ、観客を魅了し、自分がヒーローになること。そして僕の持つ天才的な力を全世界に誇示する事。それが僕の今回の闘いの目的なのです。それに怨み重なるスターさんを葬り去る事ができれば、名実共に世界一のレスラーになるばかりではなく、スターレスリングジムも崩壊し、立派な復讐を果たすことができる。まさに一石二鳥の作戦と言えるでしょう。そしてついに、スターさんは重い腰を上げて僕の待っている第11ステップリングに姿を現しました。恰好はもちろんいつもの茶色の豪華な三つ揃えのスーツで、彼の派手好きが嫌というほどよくわかります。
彼は僕ににこやかな笑みを浮かべますと、華麗にロープを飛び越えて、千両役者さながらのリングインを披露しました。
そしてロープの反動具合を引き伸ばす事で確かめた後、ゆっくりとした足取りで僕に近づきウィンクをして、その白手袋をはめた右手を差し向けました。
「フレンチくん、今日はいい試合にしようじゃないか。反則自由、時間無制限。反則しか能のないきみたちチームにとって、実に都合のいい試合方法だね」
どうやらいつもの皮肉めいたフレンドリーな言い回しも健在のようです。4年もたって、風の噂によると、彼はこの4年間スターレスリングジムの誰も肉体の鍛錬をしているのを見たことがないと言いますが、果たして彼はどれぐらい衰えているのでしょうか。
「…服は脱がないんですか?」
「服を脱ぐ?ハハハハハ…私はきみにハンディを与えているのだよ。きみこそ服を脱いで、その色白で華奢で美しい半裸を見せたらどうだね?」
僕はその言葉にカチンと来ましたので、いつまでもバカみたいに差し出している彼の手を振り払い、キッと睨みつけて自軍のコーナーに行きました。
「おやおや、師匠の手を振り払うとは、これは酷い冗談だね。ハハハハハ…!」
「うるさい!あんたの言葉なんて聞きたくないんですよ。もう黙ってくださいよ!」
吐き捨てるように言ったその直後、試合開始のゴングが鳴り響きました。