複雑・ファジー小説

Re: わかりあうための闘い【奇跡の復活!】 ( No.198 )
日時: 2014/09/20 19:28
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

スターsid

南国の美しく青い海を思わせる碧眼、真夏の太陽のようにさんさんと光り輝く温かい太陽のように輝くつややかで黄金色に光り波打つ金髪、まるで真冬の一面白銀色に覆われた世界の思わせるほど繊細な美しさを放ち、透き通るように白い肌、桜のように優しくも儚いピンクの唇、人形のように細くしなやかなバランスの取れた体格。全てが変わっていない…いや、彼に会っていない数年の間に美しさに更に磨きがかかっていた。
けれど、唯一変化したところがある。それは、彼の心だ。今の彼の心の中には、想像するだけで嫌気が指しそうなほどドス黒く、南極の氷のように冷たいものが流れている。
それは彼の碧眼の奥、青い光彩の中心部分の黒い部分を通してありありとみることができた。
前までは私が握手をしてもらおうと手を差し出すと、にこやかに笑ってそれに応じていたのに、今回は冷たく睨んで手を振り払った。
何が一体彼をそこまで変貌させたのだろうか。
まだ彼の言葉の全てを繋ぎまとめても、それを説明するには、あまりにも物足りない。
だが、この試合で彼と拳と拳で語り合えばきっと何か、彼をここまで—まるで別人と思えるほどに—変貌させてしまった元凶が見えてくるはずだ。
そう確信した私は、試合開始のゴングと共に、彼にイノシシのように猛スピードで接近し、拳を振りあげ、殴りかかった。
けれど彼は、素早く拳に反応して固めていた手を開き、まるで水が川に流れるかのように静かながらも美しさと速度を持って、私の拳を掌で受け止めていた。
この一連の動きに私は妙な胸騒ぎを覚えたので、試しに蹴りを彼の太腿に放ってみる。
すると彼はゆらりと足を残像が見えるほど早く、けれど先ほどと同じように優雅な動きで上にあげ、蹴りを脛でカットした。
「まさか…この動きは、清水くんに伝授したはずの清流拳では…!」
清流拳。それはスター流奥義のひとつで池のように静かに美しくしなやか、かつ必要最小限の動きで敵の攻撃を受け流す護身用に編み出した拳法…私がこれを伝授したのは確かに清水瑞貴くんだけだったはずだ。
それなのに、どうして彼が使用しているんだ?
彼は驚きを隠せない私を見て、美しくも自嘲的な笑みで、
「お忘れでしたか、スターさん。僕があなたにこの奥義を伝授されておたってこと」
そうだ。それをすっかり忘れていた。私は清水くんにこの奥義を伝授する以前に彼に伝授していたと言うことを。
彼は言葉を続けた。
「さらに言えば、清流拳だけじゃありません。僕はあなたの開発したスター流奥義が全て使いこなすことができます。あの時、僕に全部惜しみなく与えたのが致命的なミスになりましたね。僕の勝利する確率は—」
彼がいつもの口癖を言うよりも早く、私が挟む。
「ゼロだ。きみが私に勝利する確率は0%。きみは100%私に敗北する!」