複雑・ファジー小説
- Re: わかりあうための闘い ( No.42 )
- 日時: 2014/08/17 09:15
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
カイザーsid
スターレスリングジム。
それは、地球を日々悪の手から守るために活動している、神に匹敵する強さを持つ愛と平和の宇宙人たちの勢力ことである。
「みんな、私はもう、人間を見捨てようかと思う」
それは、唐突の発言だった。会長が我々を呼び出し、いきなりそう告げたのだ。
あまりに突然のことだったため、みんなは息を飲んだ。
もちろん私とて例外ではない。
「会長、なぜ、常に人間を擁護してきたあなたがそんな発言を?」
私が訊ねると、彼はため息をつき、こう言った。
「疲れたのだよ。人間を守り続けるのにね。我々が助けたところで、人間の心は変わらない。
これからもその無限ループが続くだけだとしたら、見捨てたほうが話が早いからね」
すると、ジャドウもいつもの含み笑いをして口を開く。
「言われてみれば、バカバカしくなってきましたな。人間は自分たちの手で自分の身を守ればいい」
不動も、
「俺も賛成だ。学ぼうとしないガキ共を地獄送りにするのも愛想が尽きた」
そして驚いたことに、星野くんも、
「僕はメープルさんだけを守ればいいですから、他の地球人を守る義理もないですし…」
一体、みんなどうしたというのだ?
いつも、あれほど地球の平和を願っていたではないか!
「だが、ガキ共がいつまでもこの状態ではな…さすがの俺も萎える」
「俺も同意見」
「僕もです」
皆の意見を聞いた会長が、再び口を開いた。
「よし…それでは諸君、人間に最後のチャンスを与えよう!ハハハハハハハハハハ!」
「「「「最後のチャンス?」」」」」
頭に疑問を浮かべる皆に、彼はいつもの陽気な声でこう告げた。
「人間を超人的能力を持った人間に変える『能力者キャンディー』を世界中にバラまいて、人間たちの能力の使用によって見捨てるか見捨てないかを決めるということさ!」
この意見に皆は賛成し、早速同盟を結んでいる世界的菓子業界の大企業、ヘンリーのお菓子屋さんを通じて全世界へと販売を開始した。
そして、それからは本当に平和な日々だった。
能力者となった人間たちは、その能力を平和のため、人々を導き助けるためにその能力を発揮した。
それを喜んだ我々は、地球のオリンピックにならって能力者オリンピックを開催し、みなで幸せを分かち合った。
しかし、ある日を境にそれが一変する。
次第に強大な強さを持つ能力者たちの中に恐れていた悪の心を持つものたちが現れ始めたのだ。
能力を悪用した彼らの暴走は凄惨を極め、このままいくと地球が崩壊寸前となるほどの大打撃を受けかねないと判断した我々は、ついに裁きを下した。
能力者オリンピックを出しにした粛清、殲滅である。
優勝者には賞金10億円となんでも願いを叶えてあげる権利を与えるという嘘の口実で、世界の能力者を集め、性格に難があると判断した能力者を不動やジャドウ、そしてスターレスリングジムの人間代表であるフレンチが徹底的に粛清をした。
他のメンバーの大半は彼らと同じ運営委員として活動し、最終予選を相手することによって、能力者たちの実力と信念を調査している。
本選でジャドウと不動が暴れまわるその光景は、まさに地獄絵図のようだった。
私にはとても耐えられないことだったため、ある日彼らに異を唱えた。
「いくらなんでも、やり方が過激なのではないだろうか?」
すると、冷酷な返事が返ってきた。
「見せしめにこれぐらいやらなければ、地球人は反省しない」
ああ…これが本当に私の同志たちなのであろうか…
まるで別人のように変わり果てた(と言うよりも、元々宇宙の殺し屋だった不動とジャドウは元に戻った)ジャドウと不動、フレンチ(不動の直弟子のため、穏やかだった性格が彼によって感化されたと推測される)の答えを聞いて、私は彼らの元を去った。
今のところ会長はこの事実に気づいてはおらず、3人だけで秘密裏に進められているのである。
いや、もしかすると、気づいていて見てみぬふりをしているのかもしれない。
危険と判断した私は会長のお気に入りの子(ハニー、メープルなどなど)を連れて故郷のフランスで暮らすことに決めた。
そしてまた、能力者オリンピックがやって来た。
ジャドウの話だと、今年の能力者は前回に比べてますますお金の執着や願いを叶えてほしいという欲望が強いものばかりらしい。
ああ…また今年も大虐殺が繰り返されるのだろうか。
我々にはその気になれば死者を生き返らせることもできるが、彼らにはそうする気もないらしい。
一体どうすれば、彼らに人間の素晴らしさを再認識してもらえるのだろうか…