複雑・ファジー小説
- Re: わかりあうための闘い ( No.49 )
- 日時: 2014/09/04 04:52
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
廉道sid
謎の出場者チワワと川村くんの試合は、もはや試合と呼べる内容ではなかった。
僕を含む出場者たちは、彼のあまりの強さに戦慄した。
なんと、彼は試合開始わずか30秒で川村くんをジャブとボディーブローの2発だけで、完全失神させてしまったのだ。
仮にも川村くんは、少年ながらこの大会の運営委員として活動しているため、その実力が折り紙つきなのは、誰もが認めるところだろう。
彼の最大の武器はそのスピード。威力は低いが、命中率と速度では他の出場者を寄せ付けない。
だが、その川村くんがたったの30秒で倒されてしまったのだ。
あのチワワと名乗る男が只者ではないことを示すのには、十分すぎる試合内容だったため、呆気にとられて僕は驚きのあまり、意識が別の方向に飛んでいた。
けれど僕の試合が始まると知らされるやいなや、意識を戻してリングに上がった。
既にリングには僕の対戦相手である日向葵さんが上がって待っていた。
彼女は長い金髪に碧眼という、どこからどう見ても僕と同じ日本人には見えない風貌をしている。もしかするとハーフなのだろうか。
そんなことを考えていると、彼女が言った。
「わたしはこんな容姿をしていますが、日本人ですよ。あなたがわたしの対戦相手である、廉道さんですね。わたしは日向葵と申します。お手柔らかにお願いしますね」
なんだか、彼女は今まで見てきたここの出場者とは違い、礼儀正しく好印象を受けた。
彼女が自己紹介をしたので、僕も同じように返す。
「僕は廉道。僕みたいなおっさんが君の対戦相手でいいのかなあ…ハハッ」
「いえいえ、お気になさらないでください。わたしはあなたと闘えて光栄ですわ」
「それは僕としてもうれしいなあ、あっ、言い忘れていたけど、僕はこの大会の医療班をやっているんだ。この試合が終わったらきみの手当てもしてあげるよ」
「本当ですか!嬉しいです〜!」
「喜んでいただいて本当に僕としても光栄だよ。正々堂々、お互いの全力を出して、清々しい勝負をしようね」
「はいっ!期待していますわ」
カーン!
試合開始のゴングが鳴り響き、ベスト8、最後のひとりを決める試合が幕を開けた。