複雑・ファジー小説
- Re: わかりあうための闘い ( No.70 )
- 日時: 2014/08/18 19:14
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
ベリーsid
「星空の舞!」
彼は本当に同じ人間なのかと思えるほどの高角度からの素早い蹴りを何度も何度も食らわせる。
しかも足の裏を使っての普通のドロップキックではなく、足の鋭いつま先を使って蹴りをあたしに見舞っているのだ。
これが…彼の実力…!
彼は身を翻してリングに着地すると、あたしに訊ねた。
「あなたはどうして、この大会に参加しようと思ったんですか?」
「…弟の病気を治すため…お金がいるの…!」
あたしには重い病気を患っている幼い弟がいる。
可愛くて明るくて優しくて、彼はあたしの大切なたったひとりの弟。
けれど、弟は重い病気を患っていて、それを治すには高額なお金がいる。
そのお金さえ手に入れば弟の病気は治る…!
この大会に優勝して、大好きな弟とまた一緒に遊びたい!
そのためには、何が何でも優勝しないと…!
あたしの話を聞いた彼は、彼はまるで人形のような綺麗な微笑みを浮かべる。
「でも、残念ですね。あなたはここで僕に負けるのですから。可哀想だとは思いますが、諦めてください。僕の勝利する確率は99%。1%はせめてもの情けです」
「…ふざけないで!あたしはあなたに勝って弟の病気を治すの…!」
そのとき、彼がフッと視界から消えた。
左右を見渡すがどこにもいない。
「僕はここですよ、ベリーさん」
上から声がしたので上目づかいで見てみると、なんと、彼はあたしの頭のてっぺんにひとさし指一本だけで倒立していた。
なんて身軽さとバランス感覚なの…!
「許してくださいね」
その刹那、彼はあたしにアルゼンチンバックブリーカーをかけた。
背骨がミシミシと音を立て悲鳴を上げる。
脱出しようにもあごと足が完璧にロックされていてできない。
人形を操作しようにも激痛で能力を満足に発動できない…!
あたしは心の中で弟に謝った。
(ごめんなさい…おねえちゃん、優勝できなかった…!)