複雑・ファジー小説
- Re: わかりあうための闘い ( No.72 )
- 日時: 2014/08/19 17:45
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
ナーニャsid
僕の対戦相手…それはチワワと名乗る謎の出場者。
本名国籍能力が一切謎なため、神秘的なオーラが漂っていると同時に、恐るべき実力を秘めた相手でもある。
彼はそのチワワのマスクを被った顔をこちらに向けてジッと僕を見つめる。
彼は今まで一言も口を聞かない。
話したら正体がばれる可能性が出てくるのかな…?
僕たちがリングに上がったとたん、試合開始のゴングが鳴った。
すると、それと同時に彼はジャブを僕に放つ。
空気を切り裂く音とともに撃たれたそれはあたしの頬を掠める。
少し掠めただけで頬に切り傷ができるこの威力…やっぱり彼は只者じゃない。
ジャブ、フック、アッパー、次々に放たれるボクシングのパンチを僕はなんとかギリギリで避けていく。
ふと、彼のマスクを見てみると、なんだか笑っているような気がした。
もしかすると、僕との対戦を楽しんでいるのかもしれない。
そんなことを考えていると、彼はストレートを撃ってきた。
身をかがめて避けると、今度はアッパーが飛んでくる。
避けても避けてもパンチは雨あられと繰り出され、反撃を与える隙がまるでない。
僕は本来ならばもうひとつの人格の零を完全に消してもらうためにこの大会に参戦したけど、まさか彼女をまた表に出すことになるなんて…
かなり屈辱的だったけれど、今はかなりの劣勢なのだから、やむを得ない。僕は、彼女と人格を交代した。
零sid
「いくよ…」
あたしはナーニャと交代し、前にいる変な恰好をしたデカい男と闘うことになった。
ったく、ナーニャはいつも自分が劣勢になると交代する癖がある。
どうしてこういう時だけあたしを頼るんだか…取りあえず、攻撃開始!
敵のパンチを避け、みぞおちに高速でひじ打ちを食らわし、ハイキックを炸裂し、間髪入れずに打撃の怒涛のラッシュをお見舞いする。
攻撃が効いてきたのか、敵は徐々に後退を始め、ついにダウンした。
「あんた、何もんだよ」
チワワに訊ねると、彼はいきなりマスクに手を伸ばし、自らそのマスクを剥いだ。
「HAHAHAHAHA!お嬢サン、なかなかやるじゃないデスか!まさか、このわたしにマスクを取らせるだナンて!」
彼の顔を見た観客とあたしは驚愕した。
マスクの下から現れたシルバーブロンドに碧眼が特徴のその顔は…
「アメリカボクシングヘビー級チャンピオン、カスター=ホッドドッグ!」
チワワの正体。それはアメリカボクシング界で、今最も世間を騒がせている男、カスター=ホッドドッグだった。
188戦無敗の記録保持者であり、そのキャラクターから子ども番組にひっぱりだこのアメリカの英雄!
「このわたしをご存じだったトハ、光栄デース!HAHAHA!」
彼は快活に笑うと再びボクシングの構えを取った。
「正体がバレてしまっては仕方がありまセンね!お仕置きとシテ、ユーに地獄以上の恐怖を味あわせてあげまショーターム!HAHAHAHA!」
その瞬間、あたしは彼の背後に凄まじい破壊のオーラを感じた。
☆
「デハ、ショータイムデス!HAHAHA!」
彼がボディーブローを放つ。
ズシリと、まるでハンマーで殴られたような衝撃があたしを襲う。
もしかして、これが彼の能力…
「イエス!わたしは自分の腕の硬度を自由に変えることができるのデス!硬度を変えることができるというコトは、すなわちパンチの威力も格段に上昇するというコトデス!」
彼のパンチをすんでのところで、避ける。彼の拳はコーナーポストにめり込み、手形を作った。
冗談じゃない!こんな威力の拳を受けたら死んじゃうだろっ!
「その通りでショータイム。ユーはここで死ぬのデス!」
彼は笑いながら超ド級のパンチを次々に撃ちこんでくる。
なんとか回避するものの、これ以上彼の攻撃を食らったら確実に地獄へまっさかさまだ。
なんとかいい反撃の手段はないのか…あたしは普段使わない頭を懸命に働かせ、敵の能力の打倒策を考える。
そうだ、あたしの能力『悲鳴奏者』を使えばいいんだ!
「確かユーの能力は、敵の弱点を突く能力を生み出す能力でシタね。デスが、わたしの能力に弱点ナンてありまセンよ!」
「…それはどうかな?硬度を自由に調節できる能力を逆利用して柔らかくしてしまえば、あんたの自慢のパンチは打てなくなるんじゃないのかな?」
「ワッツ!?」
彼の手に触れると彼の手がみるみるうちにゼリーのようにプルプルになっていく。
「これであんたはパンチを撃つことができないわ!」
「オーマイガーッ!」
その隙をついて、第1回戦で手に入れた能力、ダークブラスターを炸裂させ、満身創痍になりながらも、彼を倒した。