複雑・ファジー小説

Re: わかりあうための闘い ( No.73 )
日時: 2014/08/19 21:06
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

星野sid

「あたしはアリエス。あんたが星野天使ね。噂は聞いているわ」

「それは嬉しいですね」

「ちっとも嬉しそうな顔しないわね」

「これでも喜んでいますからね」

「ところで、漫画閉じてくれない?イライラしてくるんだけど」

「今いいところなので、お断りします」

僕は試合が始まってもリングに上がるなり、いつものように少しだけ浮遊して、ゴロンと横になりギャグ漫画を読んでいました。

ですが、対戦相手の彼女はそれが気に入らないようで、先ほどから僕に睨みをきかしています。

「そんなに僕の姿が嫌なら見なけれないいじゃないですか」

正論で返すと、彼女は一瞬だけ口ごもり、

「それができないから言ってんのよ!」

「あなたも短気な人ですね。もう少し待っていてください」

ヘッドホンを耳にかけ、彼女の声を完全にシャットアウトします。

僕は少し漫画から目線をそらし彼女を見てみますと、彼女は口をパクパクして何かを言っているようです。

が、ヘッドホンをかけているためまったく聞こえてきません。

彼女はついに怒りの形相で僕に飛びかかってきました。

けれど、当然ながら僕にはあたりません。

漫画を読み終えたので、おやつのカレーパンでも食べることにしましょう。僕はリュックからカレーパンの袋を取り出します。

ですが、一応ひとりじめは天使として褒められたことではないので、
ヘッドホンを首にかけて、彼女に食べるかどうか聞いてみます。

「アリエスさん、あなたもおひとつどうですか?」

「そんなのいらないわよ!あんた、真面目に闘う気あるの!?」

「ないですね」

正直に答えたのにも関わらず、彼女は拳を振ってきます。

「仕方ありませんね」

僕は本当に闘う気ゼロなのですが、彼女があまりにもうるさいので、ほんの少しだけ相手をしてあげることにしました。

数分後—

彼女は完全にグロッキー状態になっていました。

僕は攻撃もしていないで、彼女の攻撃ただ避けているだけなのに、本当に不思議な人です。

「バニッシュ!」

ドォン!

僕の高速のボディーブローが彼女に炸裂し、アリエスさんは口から血を吐き出します。

「能力が効かない…ってことは普段でそのパワー!?あんた何者!?」

「僕は星野天使。その名の通り天使です。それ以外の何物でもありません」

いつものように自己紹介をしますと、彼女はあろうことか、僕に向かってあの言葉を口にしました。

「あんたは天使なんかじゃないわ—堕天使じゃない?」

「…今の言葉、もう一度言ってください…!」

「何度でも言ってやるわよ、この堕天使!」

その言葉を聞いた僕の瞳に、大量の涙が溢れ出るのがわかります。

「あんた、泣いてるの?」

「アリエスさん、僕は今から天使として絶対にしてはいけないことをします。一命はとりとめますが、僕を恨んでも構いません。それだけのことを僕はするのです」

「一体何をするって言うのよ…!」

「アリエスさん、星になってください。天使のアッパー!」

チュドオオオオオオオオオオオオオオオオン!

僕の渾身のアッパーを食らった彼女は、大空まで舞い上がり、やがて見えなくなりました。

それから5分後、彼女が医務室に落下したという知らせを聞いた僕はほっと安堵のため息をついて、再び漫画を読み始めました。