複雑・ファジー小説
- Re: わかりあうための闘い【参照1000突破!】 ( No.88 )
- 日時: 2014/08/22 20:20
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
安瀬sid
「なあ…ヨハネス」
「どうしたんですか?」
「俺たち、こんなことしていいのか?」
「いいんですよ。気にせず食べましょう」
「しかしなあ…」
俺とヨハネスは現在寿司屋にいる。
この無人島は海に囲まれているため魚介類が豊富なのだが、それにしても—
「お前、よく食べるなあ…」
ヨハネスの食欲旺盛さは半端なものではなかった。
まず、川村を倒しに行くかと思ったら、お好み焼き屋でお好み焼きを平らげ、次はたこ焼き屋でたこ焼きを60個食って、レストランに入りオムライスとカレーライスを全種類制覇し、それで今度は寿司屋に来て寿司を食べているのだ。
一体コイツの胃はどうなっているんだ?
「食べないんですか?」
彼は不思議そうな表情で俺の顔を覗き込む。
「いや、食べるけど…他のメンバーはみんな闘っているんだぜ?
メープルもラグもカイザーさんたちも井吹たちも王李たちも…それなのに俺たちだけ食べ歩きして、なんか不謹慎じゃないか?」
「気にしたら負けですよ」
そう言いながら本当に嬉しそうな顔で寿司を瞬く間に平らげた。
気が付いたら俺の分までヨハネスは食っていた。
俺は改めてタッグを組んだコイツのことが心配になってきた。
☆
会計を済ませ(ヨハネスが自腹で払ってくれた。ちなみに俺はこれまで一円も払っていない)店を出ると、彼は微笑み、
「じゃあ、今度は甘いスイーツでも食べに行きましょうか」
「お前は本当に川村を倒す気あるのかよ」
「安瀬さん、日本には昔から『腹が減っては戦はできぬ』って言う諺があるでしょ」
なんでお前ドイツ人なのにそんな諺までわかるんだ?
その疑問をぐっと堪え、改めてコイツを見た。
腰まである長いサラサラの金髪にキラキラ勝輝く碧眼、茶色のインバネスコートに探偵帽子という恰好をした彼は、顔だけ見れば完全な美少女だ。
本人に性別を聞いてみたところ「男の娘」と言う答えが返ってきた。
まさか本当にその性別が実在したのかと思うと、驚きを隠せない。
そんな俺をよそに彼はソフトクリームを2本買って1本を俺にあげた。
「じゃあ、あの公園で食べましょうか」
ヨハネスの外見が完全に美少女なので、俺は今更ながらデートをしているような感覚を感じた。
でも相手は男だ。
曲がりなりにも変な感情は持たないほうがいいだろう。
☆
ベンチにふたり仲良く座ってアイスを食べる。
「安瀬さん、あなたは僕が何も考えずにこんなことをしていると思っているんですか?」
不意に彼がそんな質問をした。
心情をズバリ言い当てられ、俺は返す言葉もなかった。
彼は話を続ける。
「能力者には、相性の問題というものがありますからね。今回は僕たちが圧倒的に有利ですよ。そもそも2人で1人の敵を攻撃しますし、片方は因縁の相手ですからね」
因縁の相手?
「会長さんとカイザーさんの因縁、ジャドウさんと王李くんの因縁、僕と川村くんの因縁、星野くんとメープルさんの因縁にラグくんとフレンチくんの因縁。今回僕たちは全員因縁のある相手であると同時に超えなければならない目標でもありますから、みんな俄然がんばりますよ」
ここまで考えてチームを作っていたとは驚きだ。ここにきて俺はようやく彼を見直した。