複雑・ファジー小説
- Re: わかりあうための闘い【感想ほしいです!】 ( No.89 )
- 日時: 2014/08/22 20:57
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
葵sid
彼はわたしたちふたりに向かって急接近して、強烈なパンチを放ってきました。
わたしはあまりの速さに対応できませんでしたが、メープルさんは彼のことを知り尽くしているのかすぐに対応し、両腕をクロスさせて彼の拳を受け止めます。
さすがはスターレスリングジム出身のことだけあって、その戦闘能力は段違いのようです。
そう思って彼女を見てみますと、星野くんの体がまるで空気のようにふわりと投げられてしまいました。
彼女はまた彼の手をとってコンクリートに叩き付けます。
まるで重さを感じていないかのように軽々と投げる彼女の姿はとても凛々しくて尊敬に値します。
「わたしは力を一切使っていません。全て星野くんの力を逆に利用して投げているだけなのです」
その答えに感心していますと、星野くんは間合いを取り、彼女をジッと見つめます。
「さすがはメープルさんですね」
「ありがとうございます、星野くん」
彼女は大好きな彼に曲がりなりにも褒められたので、顔を赤らめます。
「でも、僕の敵ではないですね」
次の瞬間、彼女は不意を突かれ、思い切り殴り飛ばされてしまいました。
ですが彼女は後退しながらも足で踏ん張り、耐え凌ぎました。
ここまでのふたりの攻防を見てただただわたしは唖然とするばかりです。
メープルさんのお手伝いがしたいのですが、一体わたしは何をしたらいいのでしょうか?
「葵さん、あなたの出番ですよ!」
彼女はニコッと微笑みわたしとハイタッチを交わしました。
どうやら交代のようです。
でも、あんなに速くて強い星野くんと一体どうやって闘えばいいのでしょう。
すると、星野くんはボクシングの構えを取りました。
「僕はボクシングであなたの相手をします」
ブンッと残像が見えるほど素早い動きでわたしの懐にパンチを撃ちこもうとする彼に、とっさにローリングソパットを浴びせました。
これは廉道さんから試合中に覚えた技のひとつです。
まさか、こんなところで彼との試合の成果が生かされるとは思ってはいませんでした。
それに自信がついたわたしは今度はサマーソルトキックをお見舞いして彼を後退させます。
その攻撃に不意を突かれたのか、彼はほんのわずかですが後退しました。
彼はその可愛らしくも人形のように表情がない顔でわたしを見つめると、今度は無言でジャブを放ってきました。
しかし廉道さんとの攻防で無意識のうちに身についていた防御が、彼のパンチに反応して次々にパンチを避けることに成功します。
ジャブ、ストレート、右ストレート、左ストレート…何発も何発も避けているうちに彼のパンチに慣れて来て軽々とかわせるようになりました。
「すごいです、葵さん!」
メープルさんの応援が嬉しくてわたしは防御から今度は攻撃にシフトチェンジし、彼の右ほおを渾身のパンチで殴ります。
彼は口から血を吐いて、後退すると口を開きました。
「…どうやら、僕も真面目に闘わなけれないけないようですね」
すると彼はファイティングポーズを崩して両腕をだらりと下げました。
「葵さん、どこからでもどうぞ」