複雑・ファジー小説

Re: 堕ちてゆく僕ら−厨二ノ世界− ( No.10 )
日時: 2014/08/21 11:26
名前: ヨモツカミ (ID: cqAdOZIU)



                       †

 僕がアルテミスさんに案内されたのは、四階。空き教室だらけの階。その階の、右から五番目の教室、E教室に入る。

「待っていたぞ。このトキを……」

 教室に入るなり、すぐに退室したくなるような光景が広がっていた。
 教室の机や椅子は、積み重ねられて、教室の後ろ側にに寄せられていた。そうして空けられたスペースには、白いチョークで描かれた、魔法陣の様な物があった。
 その魔法陣の中央で、僕とアルテミスさんを待ち構えていたのは、同じクラスの長谷川君だった。

 長谷川君は微笑みながら、僕に右手を差し出して「ようこそ、厨二病同好会へ」と言った。

「中二病の自覚、あったんだね」

 僕がそういうと、長谷川君もアルテミスさんも、ふっと笑った。
 そして、アルテミスさんが口を開く。

「雅は、厨二病ってなんだと思う? 意味の分からない発言をする、自分を特別な人間だと思いこんだやつだと思う?」
「けっこう自覚あったんだね!?」

 思わず突っ込んだ僕の声を遮るように、長谷川君が「それは大きな間違いだ!」と、叫んだ。
 驚く僕に目もくれず、長谷川君は続けて言った。

「厨二病と呼ばれる、我々の真の姿とは、神に選ばれし、使徒なのだ」
「あ、そうなんですか……」

 中二病末期にもなると、そんなことを言い出すのか。

「そしてあなたも、自分では気付いてないかもしれないけど、神に選ばれし、使徒なのよ」
「な、なんだってー!?」

 なるほど、『仲間になりなさい。世界を救う為に』って、さっき言ってたけど、厨二病同好会に加入しろ、ということか。
 ちなみに、この厨二病同好会は、学校公認部活だ。公認した教師達の気が知れない。

 とりあえず、今の僕は、他の部活に入ろうとは思ってなかったし、長谷川君が「必殺・スライディング・ツイスト・土下座!」(足がもつれて失敗したが)をやってきたので、入部する事にした。

「今の君は、何の力もない。いわば無能だが、その内覚醒するだろう」

 長谷川君が、入部届けを差し出しながら言った。
 僕は、「そうなんですか」と、適当に答えて、受け取った入部届けに、名前を書き込んでいく。

「さて、自己紹介がまだだったな」
「いや、教室でしたよ。長谷川君だよね、よろしく」

 長谷川君は、左手を掲げて「俺は長谷川綴。ロシア人ハーフの、極普通の高校生だ」と、自己紹介を始める。