複雑・ファジー小説

Re: 堕ちてゆく僕ら−厨二ノ世界−【コメディ中心】 ( No.16 )
日時: 2014/09/08 19:54
名前: ヨモツカミ (ID: cqAdOZIU)

 左側に、特徴的な寝癖をつけた、高校生にしては、やや低めの身長の少年が、腰に両手をあて、仁王立ちで現れた。
 ——ああ、僕が転校初日に蹴り飛ばした、同じクラスのハヤテだ。

「ヒーロー部! 坂ノ下戦隊、坂ノ下・レッド! 参上☆」

 参上☆じゃねーよ。ダブルピースするなよ。
 不良トリオは、最早「コイツ頭大丈夫か」という目で、ハヤテを見ている。

「キミサァ、なんなん? ヒーロー気取りとか、ふざけてるのかなぁ??」
「正義を執行しようとしてるだけだゼ!」

 不良たちは「正義だとよ! イカレテやがる!」と、声を上げて笑った。
 ハヤテは不良トリオの注目をしっかり集めて、今なら逃げ出すことは、可能であろう。
 しかし、このままハヤテを放置して逃げれば、確実にハヤテが殴られる。僕の代わりに、誰かを犠牲にするなんて、出来るはずがない。

「てか、お前喧嘩売ってんのか!? ヒーローごっこは他所でやれ!」
「痛っ! 放せ、ハゲる!」

 僕が考え込んでいる間に、ハヤテはツーブロトサカ頭の男に、特徴的な寝癖の部分を、鷲掴みにされていた。
 まずい、ハヤテのアイデンティティがなくなる……!

「は、ハヤテ、逃げて! 僕の事はいいからっ」
「俺は逃げない! ヒーローだから!」
「な……!?」

 馬鹿なのか、コイツは。本当に殴られるのを避けるのと、ヒーローの誇り、どっちが大事なのか。

「じゃあ、ヒーローとして体張ってもらおうかー?」

 牛っぽいヤツが、拳を構えて、殴る気満々である。まずい、ハヤテのそこそこ整った顔がつぶされる……!
 牛の様な鼻ピアスの男の拳を見て、僅かに、ハヤテの顔に恐怖の色が浮かぶ。
 それでも、ハヤテは、無理やり笑顔を作って、得意げに言った。

「不良野朗ドモにいい事を教えてやる! 俺は、ヒーローとして特になんもできないから、暴力担当がくるまでの時間稼ぎなんだゼ!」
「あぁ? 特に何もできないくせに、ヒーローぶってたのかよ! マジ笑えるなぁ!」

 ハヤテは、さらに続けて「あいつは、信じていれば必ず来るんだ」と、言った。

「くだらねー。そろそろ、ヒーローごっこも終わりにしよっかー?」

 牛っぽいヤツが拳をヒュっと振りかざした。ハヤテが、きゅっと眼を閉じる。
 僕は、見ていられずサッと眼を覆った。

 パシッと、かなり軽い音がした。
 不思議に思い、殴られたハヤテがいるはずの方向を見た。

「ま……ヒーローは遅れてくるからなぁ」
「ちょっと遅すぎるだろ、ブラック!」

 牛っぽい不良の拳を右手で受け止める、赤っぽい、長めの髪の男が立っていた。
 登場の仕方がカッコイイ。彼は、何者なのか……。

「坂ノ下戦隊・ブラック参上ぉ」

 彼は気だるそうにそう言って、受け止めた、牛っぽいヤツの拳を捻った。
 グキッと、骨の鳴る音がした。