複雑・ファジー小説

Re: 堕ちてゆく僕ら−厨二ノ世界−【コメディ中心】 ( No.17 )
日時: 2014/09/13 22:03
名前: ヨモツカミ (ID: cqAdOZIU)


「いっ、痛ッ……放せやクソッ!」

 牛っぽい男が、そう言うと、彼は、簡単に手を放した。そして、言い放つ。

「かつ上げなんて、セコイ真似すんなよ。バイトして、社会に貢献しやがれ、ゴミが」

 かっこよく登場したものの、赤く染められた髪に、着崩した制服。そして、この口調(いい事を言っているが)。彼も不良だと、すぐに理解した。
 スーパーサイヤ人の様な男が「なんだテメェ、やんのカァ?」と、彼を挑発する。
 彼は、スーパーサイヤ人の様な男の髪型を見て、少し驚いたような顔をして言った。

「お前……はやくナメック星に行って、あの地球人の仇打ってこいよ」
「アァ? あの地球人? クリリンの事かァァァァ!!」

 この不良、やはり、カメハメ波を撃ちたくてこの髪型にしていたのか。ドラゴンボールネタでノリノリじゃないか。
 暫く黙っていたツーブロトサカ頭の男が、青ざめた顔をして、突然口を開いた。

「思い出した! コイツ、“北中の酒呑童子”だ!」
「マっ、マジかヨォ! 何でこの高校にいるんダァ!? ずらかるゾォォ!」

 突如、血相を変え、不良トリオは何処かへ走って、逃亡した。
 とりあえず、助かった。彼に御礼を言おうと、口を開きかけたが、それを遮って、彼が言った。

「かつ上げって言うのはなぁ、かつ上げされる方も悪いんだよ。てめぇは見た目がへぼそうなんだ。分かってんのか?」

 へぼそう、だと。
 確かに、それは言い返せない。
 黙りこむ僕を見据えて、彼は続けた。

「ヒーロー部は、そういうヤツの為にある。だから、何時でも俺らに頼れよ。ちなみに、いじめ解決担当は、ハヤテだ」
「僕、別にいじめられてないから!」

 ただの不良かと思ったが、根は優しい人のようで、安心した。
 ヒーロー部という、ふざけた名前の部であるが、本気でヒーローとして活動する人の部活なのだ。実際、転校初日に、ハヤテも親切心で話しかけてくれたのだから。

 チラリと、上履きに書かれた名前を確認してから「ありがとう、赤城さん」と、言った。
 彼は、僅かに眉をひそめる。

「“北中の酒呑童子”とか呼ばれてたから、びびってんのか? タメなんだから、もっと気楽に呼んでやれよ」

 ハヤテは「名前ほど怖いやつじゃねーし」と、付け足した。

「じゃあ、恋君」
「れ、恋は……やめろ」
「じゃあ、赤城」

 赤城はうなずきながら「それでいい」と言った。

「じゃっ俺、なんか職員室に呼ばれてるから、じゃーな!」

 ハヤテが元気良く、説教されにいく宣言をして、去っていった。僕の記憶が正しければ、その方向は、職員室とは真逆だった気もするが。

「じゃあ、僕も購買に行くから、バイバイ」
「オレも先輩から体育館裏に呼び出されてっから。じゃぁな」

 僕らは、それぞれの用事を思い出し、去っていった。

3話  完