複雑・ファジー小説

Re: 堕ちてゆく僕ら−厨二ノ世界− ( No.6 )
日時: 2014/08/13 01:45
名前: ヨモツカミ (ID: cqAdOZIU)

 一応サタン君にも挨拶しておこう。そう思って、左隣のサタン君の顔を見て、ぎょっとした。
 右目は青。前髪で殆ど隠れているが、辛うじて見える左目は赤。オッドアイだったのだ。
 この人、大丈夫じゃない。左目は充血していて、右目は——どうやったら青くなるのだろう。
 冷静になって、よく見てみると、両方ともカラーコンタクトであった。田舎ではこういったファッションが流行っているのかもしれない。

「宜しく、サタンく——」

 言いかけたとき、視界の端に、彼の机の上の教科書が映った。教科書に書いてある名前は山田夜志雄。本名夜志雄じゃねーか。

「あの、山田君。なぜサタンと名乗ったんですか」

 山田君は、少し驚いたような顔をして、僕を見つめた。それから、にやりと笑って「やはりアイツの生まれ変わりなんだな」と、意味深な発言をした。

「オレは山田夜志雄の体を借りる悪魔。本当の山田夜志雄は、心を病んでしまってな。基本的に俺がこの体を使うことにしているんだ」
「あ、そうなんですか……」

 ……そうか悪魔なのか。やはり、この学校は危険だ。変な所に転入してしまった。

                       †

 僕は転校生として、不慣れな学校で、一日を過ごした。
 クラスメイトは、僕の分からない事を親切に教えてくれて、どうにかこの学校でもやっていけそうだと思った。

 放課後、掃除を終えて教室に戻ると、ルーズリーフの紙を、半分に折りたたんだものが、僕の机の上に置いてあった。
 僕はルーズリーフなど使わない。おそらく誰かが意図的に置いたものだろう。
 手にとって、開いてみると、細くて薄い文字で、三行程度の文章が書かれていた。手紙だろう。

『放課後、屋上に来い。  月山瑠奈』

 これは、間違いない。果たし状だ。しかも名前から察するに、女子だ。
 僕は、果たし状を机の上に置き、頭を抱えた。
 こんな変な時期に転校してきたから、調子乗ってると思われたんだ。どうしよう。行ったらボコられる。行かなくても、明日ボコられる。

「……」

 どっちにしろボコられるのなら、早い方が良さそうだ。僕は果たし状を握り締め、スクールバッグを持って、教室を出た。

「へい! 転校生!」

 突然、声を掛けられて、ビクリと肩を震わせた。
 隣のクラス、一年四組の教室から出てきた少年に、声を掛けられた。

「オレ、ヒーロー部の部長。坂ノ下戦隊・坂ノ下レッド!」

 なにその部活。なに坂ノ下戦隊って。
 少年は、さらに続けて「何か困ってる事ないか! ヒーローだから助けるゼ!」と、元気よく言った。
 誰だって突然、ヒーローと名乗る人に話しかけられたら困るだろう。「え、いや……君に話しかけられたことに、一番困った……」と、正直に言った。
 それを聞いた少年は、はっとして「そっか。オレ、ヒーローなのに人を困らせたのか。もう話しかけないよ、ゴメン……」と、言うと、僕とは逆方向へ歩き出した。

 とぼとぼと歩く、彼の後姿を見て思う。彼は、親切心で僕に話しかけてくれたのに、あんな言い方で、その親切心を傷つけてしまった。
 それに、僕は今、本当に困っていた。

「——まって! 坂ノ下レッド!!」

 今まさに、歩き去ろうとする少年の腕を掴もうと、踏み込んだ足は、元陸上部の癖で、ハードルを飛び越える時の、美しいフォームを描いてしまった。
 振り上げられた前足は止まらず、少年の背中にヒットし、僕が少年を蹴り飛ばす形になった。
 蹴り飛ばされた少年は、誰かが掃除の後に片付け忘れ、廊下に放置された水の入ったバケツに頭から……。
 僕は、全てを見終わらないうちに、元陸上部として鍛えられた足で、廊下を踏み切ると、少年とは逆方向に、全力で走り出した。
 ごめん、坂ノ下レッド。突然話しかけた君は悪くない。ただ、何が悪かったかと言えば、運が悪かった。