複雑・ファジー小説

Re: 【ちょっぴりHな】深夜26時は、君と一緒に。【イケナイ恋】 ( No.7 )
日時: 2014/09/07 22:14
名前: こしょう ◆fX6yOA0X4k (ID: WuQbx4U1)

#1 初恋のトオル君

辺り一面の向日葵畑____
背が高い向日葵の中で、小さい私は君を見つけられずにいた。

かくれんぼ。

それは、私の一番嫌いな遊びだった。
だって私はいつも、君を見つけられずに泣いていたから。

「とおるーーー??!! どこーーー?? 」

幼くて、甲高い私の声は向日葵畑中に響き渡った。

「なんで、いないの… ゥウ、ヒック…ッ。」

立ち止まり、ボタボタとこぼれていく涙を嗚咽混じりに手で拭った。
拭いきれない程の涙__。私は、君が居ないとダメなの。

すると、遠くで、こっちに向かって走る足音が聞こえた。
そのどんどん大きくなって行く足音の方向を私はただただ眺めた。

「とおる…ッ!!」

「ばかだな! 泣くなよ、ぼくはここにいるから。どこにも行かないから。


君は私を抱きしめて、頭を優しく撫でてくれた。
その手の温もりは、私の心を落ち着かせた。

「ほんとに、どこにもいかない? 」

「ああ、どこも行かない。」

「ずっと、いっしょにいてくれる? 」

「うん。ぼくたちは、ずっといっしょだよ、約束。」

君が突き出した小指に、私の小指を絡めた。




「___約束だからね!!」


*****

「おる………薫!!!!!!! 」

耳元を劈くような、母の大声に思わず目を開く。
大きなあくびをしてから、母に尋ねる。

「?? なに…母さん。」

「ずいぶんと気持ちよさそうに寝てたトコ悪いけど、そろそろ着くわよってコト。」
隣には、ハンドルを握り車を運転する母の姿があった。

随分と昔の…十年位前の夢を見てたな…。
そういえばトオル君とのあの、『ずっと一緒』って約束、結局私が引っ越したから守れなかったなぁ。

ふと車の窓に目を向ける。
そこから見えた景色は、ひどく田舎で緑の多い景色だった。
クソ田舎…、東京とは一変してここは蝉の声が比にならない程うるさい。

「お婆ちゃんの家って、こんなクソ田舎だっけ〜? 」

「そうよー、最近行ってなかったからね。忘れてたんでしょ。」

訳あって、お婆ちゃんの家で暮らすことになったけど…、
こんなクソ田舎で生活するなんて…、コンビニあんのかなぁ?

「都会の鼠の薫は、田舎はお気に召さないのかしら? 」

「まぁーね、ここで暮らしていけるのかなぁって? 」

「そうねぇ、でも十年前はここで暮らしてたのよ?ほら、隣の家の…徹君だっけ?あんた、仲良くしてもらってたじゃない。同い年なんだから、もしかしたら会えるかもね、」

「もう、覚えてないよ。十年前だもん。」

…もちろん、嘘だ。
忘れもしないトオル君は、私の初恋の人で__

あの、柔らかい髪の質感や二重でぱっちりと開いた目は、今でも覚えている。

きっと、とっても格好いい少年になったんだろうな。。。



……その予想を裏切るような展開が待ち受けていることを、吉野 薫は今に知ることになる___。