複雑・ファジー小説

Re: 愛と正義の交響曲(元わかりあうための闘い) ( No.13 )
日時: 2014/09/24 11:12
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

雄介side

「上条雄介のガキ。お前はここで俺に敗れる」

スタジアムへ向かう俺の行く手を突然阻んだのは、長い長髪に猛禽類を彷彿とさせる殺気だった瞳、引き締まった半裸が特徴の若い男だった。

「お前が俺の相手か」

俺が訊ねると、男はニヤリと笑みを浮かべた。

「俺はこの大会の運営委員のひとり、不動仁王。とりあえず、予選通過おめでとう…と言っておくとしよう」

運営委員。それはこの大会の主催元であるスターレスリングジムのトップクラスの実力者たちで構成された、文字通りこの大会を運営する存在の者たちだ。
だが、なぜそんな奴のひとりが、わざわざ俺の目の前に現れたんだ?

「邪魔だから、どいてくれないか?」

「どけ…だと…?」

その刹那、不動と名乗る男の猛禽類のような茶色の瞳がギラつき、計り知れない威圧感を感じた。

「ガキ、お前はジャドウを知っているか」

聞きなれた名前を奴が口にしたので、警戒の色を強める。

「ジャドウの知り合いなのか?」

「奴は俺の親友だ。本来ならばこの役目は奴なのだが、奴が『上条雄介は俺と闘うのは飽きただろうから、代わりに闘ってきてほしい』という頼みでな…」

ジャドウ=グレイ。俺が闘ってきた能力者の中で、最も苦しめられた相手だ。
突如として連戦連勝をして調子づいている俺の前に現れ、人生で初めて手も足も出ない完敗を喫しさせたあの男。
まさか奴もスターレスリングジムの出身なのか?
だが、奴は俺の問いに答えようとしなかった。

「ここを通り、スタジアムまで行きたければ、俺を倒してからいくがいい」

「そうかよ。お前にどんな理由があるかはしらねぇが、今は目の前にいるお前を倒すだけだ」

俺はホルダーからカードを引き抜いた。

「ドロー&コール!」

カードから思念体を飛ばして攻撃を開始する。
俺の能力は、様々な効力を持つカードを使うことだ。

「ジャドウが言うには、お前はかなりの危険人物らしいからな。お前がどれほどの危険人物なのか、判断させてもらう」

3の倍数のカードから『デルタレーザー』を発射する。

「…やはり、まだお前はガキのようだ」

彼はなんと俺の光線をいとも簡単に、素手で弾き返した。今までこの光線を弾き返した奴など、ひとりもいなかった。あのジャドウでさえ、瞬間移動で避けていたほどだ。
それなのに、奴は逃げるどころか真正面で弾き返しやがった。

「だったらこれでどうだ。『ワイルドドロー』!」

俺は毒、麻痺、衰弱のいずれかを敵に与えるカードを飛ばした。当たればかなりこちらが優勢になる。最も当たらなければ意味はないが、その心配はないだろうと思った。
だが、奴は驚くべきことに、ワイルドドローのカードを鷲掴みにし、やすやすと引きちぎった。

「これはただのまやかしだ。まさかこれが、お前の能力なのか?」

俺の能力を能力とさえ思っていないだと…!?
奴の全身から放たれる凄まじい闘気に、俺はかつてない戦慄を覚える。

「もしそうなら、残念だな…仮にも本戦第1回戦へ出場しようとしているガキとは思えん…」

彼は仁王立ちになり、さらに瞳を殺気立てて言った。

「ナチュラル!」

すると、信じがたいことに、俺のカードホルダーとカードが消滅したのだ。
武器がなくなったことに、俺は一気に目の前の人物に恐怖を覚える。
敵は引き締まりまったく無駄のない筋肉のついた屈強な体をした大男。
対する今の俺は、丸腰かつ格闘はあまり得意としていないため、敵に勝てる可能性は先ほどより、さらに低くなってしまった。

すると、俺がこうなることを見越していたのか、奴は不敵に笑み、口を開いた。

「俺の能力のひとつ目は、敵の武器を消滅させる能力…通称ナチュラル。武器を使うとは、自分の力に自信がないことの表れ。やはりお前はガキのようだな」

このおっさん…只者じゃねぇ!

「当たり前だ、ガキ。この俺、『明王』こと不動仁王が、お前を完璧に地獄へ往生させて殺る!」