複雑・ファジー小説
- Re: 太陽天使隊 ( No.18 )
- 日時: 2014/09/23 21:04
- 名前: スクランブルエッグ (ID: EhAHi04g)
フレンチside
Aブロック第1試合はベリーさん、Bブロック第1試合は愁二さんが、見事勝利を収めました。
試合の様子を見る限りですと、彼らはまだまだ、真の実力を発揮していないように思えて仕方がありません。
恐らく、次の試合に向けて、力を温存させていたのでしょうか。そんな予測を立てていますと、いよいよAブロック第2試合—つまり、僕の番になりました。
僕の対戦相手は、あろうことか、「世界の帝王になりたい」とか、訳のわからないことを言っている、つやのある長い黒髪に濃紫の瞳に白い肌、中性的な声と黒い軍服に黒いマント黒い制帽という服装が特徴のルナティクスさんです。このまま、何も言葉を交わさずに試合をすると言うのは、ちょっと重々しい気がしましたので、彼に歩み寄って営業スマイルを向けながら、挨拶をします。
「ルナティクスさん、おはようございます」
彼は横目でチラッと僕を見て、
「何か用でもあるのかな?」
「僕はあなたの対戦相手ですから、一応ご挨拶しておこうかと思いまして。コレ、お近づきのしるしにあげます。どうぞ」
僕は彼の手に自分の対戦成績を渡した後ウィンクをひとつして、彼から距離を置きました。
さて、僕の対戦成績を見た彼は、一体どんなリアクションを引き起こしてくれるのでしょうか。
☆
ルナティクスside
彼から渡された謎の紙を見た僕は、そこに書かれている内容に、思わず目が飛び出しそうなほど驚愕した。
『スターレスリングジム卒業生 フレンチ=トースト 対戦成績』
僕と対戦する事になっている、僕と同等と思われるほど中性的かつ可憐な容姿をした彼は、なんと、この大会の主催元である、スターレスリングジムの卒業生だったのだ!
そして、僕は名前の下に書いてある対戦成績を読んで寒気がした。
彼はスターレスリングジムの師匠クラスの全てと拳を交え、唯一会長であるスターさんに引き分けた以外は、全ての試合において全勝しているのだ。
目の前に広がるこの残酷な現実と、愛らしい笑みを浮かべる彼を何度も何度も交互に見つめるが、どうしても、彼がそこまでの実力者とは想像できないでいる僕がいた。
彼から貰った紙をビリビリに破いて、その場に投げ捨てる。
これが、僕の出した答え。
世界の帝王になるべくして生まれた男である、この僕が下等な能力者に負けるわけなどない。
自分にそう言い聞かせ、彼よりも先にステージに上がる。彼がどんな能力の使い手か、それは今はわからない。けれど、きっと大したことのない、僕の能力に比べれば遥かにに劣るものであるはずだ。
そう考えると、内からみなぎるように自信が湧いてきた。
「ステージに上がって来なよ、フレンチ=トーストくん」
「そうですね」
彼は腕を後ろに組んだかと思うと、トン!と軽く地面を蹴って、会場のドームに届きそうなほど上空高くに飛び上がり、そこからクルクルと何回も回転して、大理石のステージにスタッと華麗に着地した。
そのあまりに人間離れした動きに、観客は騒然として、声をあげた。けれど、僕はそうではなかった。なぜなら、彼の先ほどの動きは恐らく身体能力を上昇させる能力だと踏んでいたからだ。
だが、僕の予想は、彼の次の一言によって砕かれた。
「ちなみに、今の動きは能力によるものじゃありませんよ。人間、鍛えれば何でもできるって本当ですね」
今の動きが能力によるものではない…?
その驚愕の事実に戦慄した僕の額からは、冷や汗が流れ落ちた。