複雑・ファジー小説
- Re: 太陽天使隊 ( No.23 )
- 日時: 2014/09/23 21:13
- 名前: スクランブルエッグ (ID: EhAHi04g)
安瀬side
午前の全試合が終わり、残りの試合は2時間の食事時間を取った後に行われるらしい。
けれど、俺にとってはそんな事はどうでもよかった。
なぜなら、俺は先ほどの試合で負けたのだから。
ため息をつき、スタジアムを出てトボトボ歩いていると、背後から聞きなれた声がした。
「安瀬さん、お久しぶりですね」
振り向くとそこにいたのは、腰まであるサラサラの金髪に碧眼、茶色のチェック柄のインバネスコートと白手袋に探偵帽が特徴の俺の親友である、ヨハネス=シュークリームがいた。
彼は「歩く性別詐欺」と揶揄されるほど整った顔立ちをしている。
もし、彼に喉仏がなかったら、誰がどう見ても美少女に間違えてしまうだろう。
現に、何度も顔を合わせている俺でさえも、彼が女に見える時があるのだから。
「ヨハネスか…どうしてお前、こんなところにいるんだ。事件でも起きたのか?」
彼は故郷ドイツで14歳という若さながら、探偵として活躍しており、その実力はドイツ№1と言われるほどに高い。そんな彼がこの島にやって来たのだから、何か事件があっての事だろうと考えた。すると彼はニコッと可愛らしい笑みを浮かべ、
「そのお話は、そこの喫茶店でご飯でも食べながら、お話しましょう」
☆
彼の勧める喫茶店に入ると、そこは観光客が沢山いる事もあってか、かなり繁盛しているようだった。
高い吹き抜けの屋根には、オレンジ色の電灯がぶらさがっており、それが優しい落ち着きを演出している。
景色のよく見える窓側の席に座った俺たちは、メニューを注文した後、先ほどの話の続きをする。
「どうしてこの島に来たんだよ」
「この大会に、どうしても倒さなければならない敵が参加する事になりましたからね」
彼の言う、どうしても倒したい敵とは一体誰の事だろうか。
「安瀬さんも、よくご存じのフレンチ=トーストです」
彼が真剣な顔で言った。実は彼は探偵である前に、スターレスリングジムの卒業生だ。
スターレスリングジムは世界屈指の超強豪能力者が集まる団体で、世界中から弟子として相応しい人間をスカウトし、能力者の育成に力を注いでいる。
けれど、そこを卒業できたのは、彼を含めてわずか3人しかいない。
それはつまり、彼がその愛くるしい容姿とは裏腹に、とんでもない強さを秘めていると言う意味を持つわけだが、この大会の本選出場者のひとりである、フレンチ=トーストは彼と同等か、それ以上の強さを秘めていると言う。
「でも、どうしてあいつを倒したいんだ。同じジムを卒業した仲間だろ」
「……そう言えるといいのですが……」
彼は視線に影を落とし、少し低い声で言った。
どうやら、彼には俺の知らない秘密があるらしかった。
「仲間じゃないのかよ?」
「フレンチくんと、もうひとりの卒業生である軽井沢隼人くんは、僕と理想の違いで対立しているんです」
彼の話をもう少し詳しく聞くと、さすがの俺も仰天する事実を知る事になってしまった。
なんと、スターレスリングジムのメンバーの大半は人間ではなく、太古の昔に地球に飛来した、惑星エデン出身の宇宙人だと言うのだ。
始めこそ、俺も親友とは言え、さすがに奴の話を信じる事は出来なかったが、奴は冗談を言っているとは思えないほど真剣な瞳で俺に話している。
その様子を見ていると、コイツが冗談を言っているようには思えなかった。
「それで、理想の違いってのは何なんだよ」
「彼らふたりは、僕とは違い、自分たちを世界を束ねるに相応しい超エリートと確信していて、自分たちより劣ると見ている能力者を全て殲滅…つまり、皆殺しにしようとしているんです」
「マジかよ…」
あまりにも危険な思想のため、言葉が出なかった。
お互い長い沈黙が続いたのち、先に言葉を発したのは、俺の方だった。
「でも、たった2人だけなんだろ。だったら運営委員だけで倒せるんじゃねぇか?」
「それがそうもいかないんです。彼ら2人は本当に強くて運営委員と互角に闘えるほどの強さを持っていますし、彼らは運営委員の何人かに軽いマインドコントロールをかけて、自分たちの味方に加えていますからね」
そこで彼は一息ついて、
「そして、その味方で判明しているのが、不動さんとジャドウさんなんです」