複雑・ファジー小説

Re: 能力者物語 ( No.29 )
日時: 2014/09/23 21:24
名前: スクランブルエッグ (ID: EhAHi04g)

トリニティsid

彼は氷の剣を作り出し、私の愛剣と真っ向から勝負を挑む。

「軽井沢くん、きみはフレンチくんに操られているだけだ!」
「そんな事あるわけない。彼が嘘をつくとは考えられないんだもの」

何度もぶつかり合う、私と彼の剣。
しかし、暑さのためもあってか、彼の作り出した剣はすぐに溶けてしまい、その度に彼は新しい剣を出現させる。
彼は、雪や氷を自由自在に作り出す能力を持っていた。彼の基本戦法は能力を生かして氷のフィールドを生み出して、アイスリングでプロレス技を発動して倒すと言うパターンである事を、これまで彼の犠牲になった仲間の試合で拝見していた私は、彼がいつ氷で大理石のステージを覆うのかと、身構えていた。

「そろそろ、僕の能力の真骨頂を見せてあげる」

彼は床に手をかざし、ステージ全体を氷漬けにして、美しくも幻想的な氷のステージを出現させた。そして、ここからが、彼の履いているフィギュアスケート靴が本領を発揮する。
先ほどの3倍のスピードで急接近し、氷の剣で斬りかかる。それを私は自分の能力で青い翼を生やす事によって、空中へ逃げた。

「きみが雪と氷を支配するのなら、私は空を支配する!」

舞い落ちる羽を手裏剣のように彼に放つが、氷のシールドで全て防御されてしまう。

「スノウ=クラッシュ!」

彼は猛スピードかつ正確なコントロールで雪玉を作って炸裂させる。まるでマシンガンのように放たれるそれを食らった私は落下し始める。
だが、地面に激突する直前に体勢を立て直し、なんとか無事に着地した。

今のところ、勝負は一進一退。

だが、これはあくまで能力の勝負と言うだけの話。
彼の本当の恐ろしさは、能力などではなく、私の上を行くプロレスの華麗なる空中殺法にあるのだから。
すると彼はスケート靴を脱いで、プロレス用のブーツに履き替えた。
しかし、私がその一瞬の隙を逃すはずはなかった。

「ダイヤモンド=スラッシュ!」

剣でダイヤ型の斬撃を生み出し、超高速で敵にぶつける、ダイヤモンドスラッシュを発動した。これは数多の強敵を打ち破ってきた、私の最高にして最大の得意技だ。
けれど彼は、掌から吹雪を放って凍り付かせると、それを殴り、粉々に破壊してしまった。
やはり、スターレスリングジムの卒業生という称号は伊達ではない。

「ここからは、スター流で勝負しないかな」

彼はそう言って、氷で3本ロープを張り巡らせて、氷のリングを再現してしまった。

「…よかろう!」

私は剣を場外へ投げ捨て、捨て身の覚悟で彼と対峙する事を決意した。