複雑・ファジー小説

Re: 太陽天使隊 ( No.31 )
日時: 2014/09/24 09:17
名前: スクランブルエッグ (ID: CMSJHimU)

廉道side

僕は1回戦で、軽井沢くんと闘い重傷を負った、トリニティバードンという出場者もとい運営委員の容態が悪化したと言うので、急いで医務室へ向かった。
すると彼は屈強な体中に包帯を巻き、息もだえだえになりながらも、僕を青い真剣な瞳で見て、言った。

「…廉道先生、あなたに…頼みがある…!」
「頼み?」
「用件を話す前に、ここは私と先生だけのふたりだけにしてくれないか」

僕は彼の言葉を遮ろうとしたが、彼の真剣かつ優しさにあふれた瞳を見て、他の医療班のメンバーを部屋から出して僕と彼のふたりきりになった。

「それで、僕に頼みって何かな?」

すると彼の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。

「先生、フレンチくんの暴走を…狂気を止めるのを手助けしてほしい…!あなたなら、それができる…!」

彼が気になることを言ったので、僕が疑問に思い訊ねると、彼は彼自身が知っていることを話した。
まさか、彼がこの大会の本当の目的は、そんな非道なものだっただなんて……
信じがたい話だったけど、彼の瞳は嘘を言っているようには見えなかった。
そして彼は、一通り話すと一呼吸おいて、震える手で傍にかけてあった鞘に入った剣を僕に差し出した。

「コレは…」
「私の愛剣ブレイブレード。私の魂とも言えるこの剣を…我が友カイザーに捧げて欲しい…!」

その瞬間、彼の腕から力が抜け、だらりと垂れ下がった。もしやと思い聴診器で心音を確認してみると、心音が完全に停止していた。
脈もなく、瞳孔の反射もない。

つまり……彼は亡くなった。

僕は彼の形見を握りしめ、彼の最後の願いを叶えることを、固く誓った。


カイザーside

「我が友、トリニティが死んだ…」

廉道先生からそれを聞かされた時、私は悲しみで満ち溢れていた。

ああ…またしても大切な友を闘いで失ってしまった…!

トリニティ=バードン。彼は不動、ジャドウと並ぶ私の親友のひとりだった。
理知的な平和主義者で私と馬が合い、不動とジャドウが会長についた時も、彼だけは私についてきてくれた。それだけではなく、彼には数えきれないほどのたくさんの恩があると言うのに、私はそれを万分の一も返すことができなかった…
悲しみにくれている私に、廉道先生は彼の愛剣ブレイブレードを差し出した。

「彼が、この剣をきみに託してほしいと、最後の遺言を残していたんだ…」

私は彼の剣を廉道先生に受け取り、彼の真意を考えた。恐らく、彼がこの剣を使って真っ先に打倒してほしい人物…それは、私の対戦相手の怒雷氷であろう。彼と怒雷氷は昔から、腹違いの兄弟と言う因縁で対決していた、宿敵同士だ。正義と悪、白と黒、まったく正反対の感情を持つ、憎き宿敵を倒してほしいと、私に願ったのだろう。
彼の剣を少し引き抜き、その青白く光り輝く剣を見て、彼の意思を受け継ごうと誓った。
ステージに上がると、227センチの長身に黒いローブを纏い、茨の冠を頭にかぶり、骸骨のように痩せこけ無表情な男を睨みつけた。

「フハハハハハ……邪魔だった小賢しい弟は死んだか。実に愉快だ」

彼はその骸骨のような顔で、口だけ開けて高らかに笑った。

「カイザー=ブレット。次はきみの番だ」
「……私は太陽神カイザーとして皆に慕われているが、今日だけは、友のために破壊神となり、お前を地獄に突き落として殺る!」

そしてついに、試合は始まった。