複雑・ファジー小説
- Re: 愛と正義の交響曲(元わかりあうための闘い) ( No.45 )
- 日時: 2014/09/25 14:25
- 名前: スクランブルエッグ (ID: CMSJHimU)
フレンチside
まったく、いきなり第1試合で闘うことになるなんて、嫌だなァ…
僕は心の中で少し不満がありつつも、それを表情で出すようなヘマはせず、あくまで営業スマイルでステージに上がりました。
対戦相手はゴーレムを作り出す能力を所有している、雲仙愁二さん。
彼は1回戦において非檻さんと対決し、相手の能力の相性がよかっためたまたま勝ちあがることができたと噂をする人もありましたが、実際に彼は運だけの持ち主なのではなく、あの巨大なゴーレムを作り出すほどの能力を持っているのですから、かなりの強豪には違いないのです。
最も、僕に彼のゴーレムが通用するとは、到底思えませんが…取りあえずここは、第1回戦の時と同じく、相手の出方を見極めたほうがいいと判断し、彼に攻撃を仕掛けるように促します。
「僕はここを1歩も動かずに、あなたを倒してみせますよ」
「……」
彼は無言を貫いていますが、これは無視しているのではなく、緊張で答えられないということを僕は前の試合で見抜いていました。
「ウフフッ、ここはお互い肩の力を抜いて、リラックスしていきましょうよ」
「……だな」
「ええ、それが一番です」
「…じゃあ、俺から攻撃させてもらう」
彼は自前の砂でゴーレムを生成しました。
体高6メートルのゴーレムは、彼の指示で僕に向かってきました。
ゴーレムは攻撃力が高い反面移動速度が遅いという弱点があります。
ですから、本来ならば僕の速度を持ってすれば避けることなど、余裕でできるのですが、ここはあえて約束通り、1歩も動かずにゴーレムと対峙します。そして、懐から自慢の得物であるフルートを取り出します。
「愁二さん、ご存じでしたか?砂は風と音に弱いということを」
僕はフルートの音色でアッと言う間に崩れ落ちて、ただの砂に戻ってし
まいました。
彼は少し冷や汗を浮かべながら、次なる物質でゴーレムを作成します。
彼が次に選んだ材料、それは水でした。
☆
愁二side
ヤベェ…コイツ、砂は音にも弱いとか言って、砂のゴーレムを簡単に破壊しやがった。
けれどゴーレムの犠牲のおかげで、奴の得物がフルートであることが判明した。
これにより、俺が勝利する確率は、ほんの僅かながらも上昇する。
見たところによると、奴はフルートによる音波攻撃を好む。
つまり、俺と同じ遠距離でこそ強さを発揮する。
砂は破壊できても、これを破壊するのは難しいだろう。
そう思案し生成したのは、水のゴーレムだった。
水も砂と同じく物理攻撃を無効化する他、今度は音に弱いという弱点もない。これなら、奴を倒すことができるはずだ。
そう確信し、奴を攻撃するように指示を与えた。
ゴーレムは飛び上がり、上空から拳の乱撃を見舞う。彼はその威力に吹き飛ばされ、地面を離れた。
だが、巧みな受け身によりダメージを軽減し、素早く立ち上がってきた。
「動いてしまいましたか…どうやら、約束は守れなかったようですね。あなたが砂のゴーレム以外にもゴーレムを作り出すことができるとは、予想外でした。でも、このゴーレムは先ほどのもによりも明確な弱点があることに気づきませんか?」
奴が気になることを言ったので、俺はゴーレムを見てみる。
すると、いつの間にか6メートルほどあったゴーレムが半分ほどの大きさになってしまっている。
これは、まさか—
「そう。この炎天下の中で蒸発し始めているんですよ」
少し額に汗を浮かばせながらも、奴は余裕の笑みを崩さない。
その笑顔が可愛らしいために、余計に嫌な気分になる。
砂もダメ、水もダメか…どうすればあいつを倒すことができるだろうか。
俺は水のゴーレムを、元の水に戻した後、腕を組み、考えを巡らせる。
その時、意外な盲点に気が付いた。
銃を使えば、簡単に奴を倒せると言うことに。