複雑・ファジー小説

Re: 或る国の僕と君と… ( No.1 )
日時: 2014/09/21 16:39
名前: 姫音桜子 (ID: FLOPlHzm)

1章 旅に出る

手が凍るように冷たくて動かせない
暖かい感覚も忘れてゆく

これは私が望んだ答えだ…
これで世の中は平和になるに違いない

「アンバー…アンバー!アンバー・メイソン!おい、おい!」

微かに聞こえるのは誰の声…?
身体が冷たくて、もう確認する気力なんてないや……


「アンバー殿!アンバー殿!!起きて下さい!いつまで机で寝てらっしゃるのですか?!女の子なんだから 机で寝ないでください!!」

声を荒くして叫ぶのは、私の弟子エラ・ホール
しっかり者で少し小柄な弟子

2年前に私が街中を歩いていたらエラが餓え死にそうな所を助けて、弟子にしてくださいとお願いされ心広く引き受けたのだ

「悪いね、徹夜続きなのさ…もう少し…寝かせてくれないかい?…」
私は睡眠不足で朦朧とする頭でエラに話す

「まったくもう、アンバー殿はお忘れになされたんですか?今日は西の王女様がわざわざここに来てくださる約束の日ですよ!」
呆れた顔つきでエラは近くの椅子に寄りかかった

それを聞いた私は、目をこすりながら
ゆっくりと伸びをし大きなあくびをする

「ふはぁーっ…そっか…そうだったね」
「紅茶、置きましたから冷めないうちに飲んでくださいね。私は部屋の掃除しますから」

彼女はドアノブを回し部屋を出た

確かに紅茶が置いてあった
温かな紅茶で香りがいい…

夢の中ではあんなに冷たかった手が
一瞬にして紅茶の温度に染まる

一体、あの夢はなんの事なのだろうか

紅茶をすすろうとした。口をとがらすと唇の両脇には深い皺が寄る。

「さあーて、王女様が来るまで町の皆の魔法の依頼片付けるとするか」

ぎぃいーと古びたドアが開く
振り向いて見ると、それは西の王女様だった

「失礼してよろしいかしら…?」
ふんわりと柔らかな笑みを浮かべる王女様

「王女様!いつの間に?」
あまりの驚きについ質問してしまう

「つい先ほど馬車で着いたところよ、気にしないでよ」

彼女の名はアリーヤ・ウェスト
私の恩人であり一国の立派な権力者なのだ

天使のような綺麗な顔立ちで初対面の人間はかならず見惚れてしまう。
ほこりや本で汚い私の家の雰囲気が負けてしまうほどの輝き。

「えっと、汚い椅子だけど、どうぞ座ってください…エラ!紅茶をお願い!」

「はーい」

王女はくすりと笑い

「…大丈夫よ。ゆっくり座ってお茶して話すわけにはいかないの」

「そ、そっか…ごめんなさい、つい」
「それで、本題に入るわ」

王女は鋭い目つきで真面目に私を見る
私は、ごくりと唾を飲み込んだ