複雑・ファジー小説
- Re: 或る国の僕と君と… ( No.2 )
- 日時: 2014/09/21 16:47
- 名前: 姫音桜子 (ID: FLOPlHzm)
「魔女退治をお願いできるかしら?」
魔女退治…
私のもっとも嫌いな言葉だ…
見るだけでも熱い炎で苦しんで
死ぬ魔女を国民は恐る恐る見ている
同じ魔法を使えるのに…
確かに、魔法使いは王女の命令を聞いたり
一般人のお願いを聞いたりする役目で
魔女は悪魔との契約を結んだ人のことだ
だけど、なんだか私はすっきりしない
「王女様は知っているはずです…私は魔女退治を好まないということを」
「ええ、もちろんよ」
当たり前だという顔をする王女
「なら、どうしてですか?」
「…ただの魔女なら、私は許せるけど…
今度は違うわ…」
深いため息をする王女の姿を見て
只事ではないことを想像する
「これは、貴方の一家が関わる戦いよ」
「私の…一家…ですか?」
静かな森の風が窓から頬を通る
私の…一家…?
呆然とふんわりと微笑む王女様の顔を見る
鳥肌がたった気がする
「そうよ、メイソン家が関わる…」
「あのー、お茶…」
ドアからこっそり出てくるエラ
片手には紅茶…
「あぁ、もうこんな時間なの…でわ、私は仕事があるから失礼するね」
ゆっくりとふわっと白いドレスが花の香りをする…
「あの、王女様お茶は?」
「ごめんなさいね、もう飲む時間もないのエマちゃんが代わりに飲んでくださいね」
私とエラに手を振り 王女様は部屋を出た
「…私の名前、エマじゃなくてエラ…」
「そんなに変わらないのだから、気にすんなエラちゃん」
「アンバー殿酷いですー!!」
あははごめんごめんと空笑顔をする
私の頭の中によぎるのは幼い日の思い出
「アンバー殿の嘘笑いは似合わないです…」
ボソッとエラは呟き
紅茶を片手にまた部屋を出た…やっぱり、気づかれるよね
机の引き出しに首にかけてる鍵で閉まった杖を取り出す
隣には小さい頃描いた家族
妹と母と私
元々、父親は私が物心つく前にこの世から消えた…懐かしい紙を愛おしそうに眺める
「それより、魔法の依頼片付けなきゃ」
ゆっくり椅子から立ち上がって杖を持つ
この部屋には呪文やら悪魔やら薬の作り方の本がある
杖を4回ほど回し
結晶のようなものがキラキラ杖の先を通して
何もない私の目の前から依頼リストを出す
そのリストを私は読む
「えぇっと、お。これは珍しい依頼…」
そしたら、ドアからノックの音が
「はーい」
またぎぃいーという古いドアの音がする
「おい、アンバー・メイソンか」
私よりはるかに背の高い赤髪男が唐突にいう
「そ、そうですが?」
唐突過ぎて戸惑う
「確かにそうだな……短くもなく長くもない金髪の髪の毛に緑色の瞳…そして、大きな…む」
大体言いそうなことがわかったので
杖を素早く回し、部屋にある本を宙に浮かせ男の顔面にシュートする
「チカンはとっととお帰り」
本は1000ページもあったやつなので
どうやら重くてぶっ倒れたらしい
「いったたっ、まだ何も言ってないだろ…」
鼻血を出しながらゆっくりと彼は立ち上がる
「あら、もっと重たい本が良かったの?」
杖をまた回そうとする
「す、ストップ…」
「どうなさいましたかぁああ!?」
前に走るなと言って慌てて小走りで駆けつくエラ。
「う、うるさい」
あまりの大声に耳を塞ぐ私
「お客さん、はっ、鼻血が…」
涙目になりながら心配そうに男を見るエラ
「あぁ…」
平然に立つ男、見てるだけでイライラする
「アンバー殿!いくらストレス溜まってても暴力はいけませんよ!」
頬を膨らませるエラ
「理不尽な!そいつが失礼なことを言ったから悪いんだよ!ってかエラちゃん、私のことそういう風に思っていたの?!」
エラが私をストレスが溜まったら誰でも暴力を振るう奴と思い込んでいてがっかりする
てっきり心優しい恩人だと思い込まれてると想像したのに…戻ってこい私の理想のエラ!
「このチビはなんだ?」
エラの何かがちぎれた気がする
「アンバー殿の言った通り口の悪いクソったれの失礼男ですね」
「いや、私…彼の事失礼なこと以外言ってないんだけど…」
エラに冷たい視線で睨まれた
「す、すみません、こいつ口の悪いクソったれの失礼男ですね!そうですね!」
エラは満足そうに微笑むと
歌声の呪文を唱え始めた
「…magie pour tuer…♪」
「ね、ねえ、せめて彼の命だけは…」
「いや、ここで殺さないでどこで殺せってんですか?」
そういいトドメを刺すエラ
「Mourir…♪」
すると、男は手から炎を出し
エラの出した攻撃魔法を引き止めた
「チビだから、攻撃力も弱いな…」
只者じゃない…と認識して攻撃体勢に入る
「あんた、何が目的だ」
眉を声を鋭くして彼に訊ねる
「まぁ、そんなに警戒する相手ではないよ」
ふっと笑う男