複雑・ファジー小説
- Re: 〜闇の系譜〜(サーフェリア編)上【完結】 ( No.302 )
- 日時: 2018/06/29 09:10
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: ktklDelg)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode=image&file=6048.jpg
〜あとがき〜②
ここからは、前編の内容整理も兼ねて、各話ごとの感想・解説を銀竹が語っていきます!
重要な設定を載せるわけではありませんし、長くなるので、読まなくても大丈夫です。
ただ、サーフェリア編は裏設定的なものが沢山あるので、もし興味がありましたら、気になる話だけでも目を通していただけると嬉しいです。
最後まで読んで頂いた体で書いてしまうので、ネタバレはしています。そこはご注意を!
URLにはイラストや動画も載せていきます。
それでは、まず序章から(^^)
†序章†『渇望』
ルーフェンが、ヘンリ村で見つかるシーンから始まりますね。
死ぬ間際に悪魔が現れて……なんて、とても王道展開(笑)
この時に現れた悪魔は、バアルです。
ミストリア編のあとがきでも書いた気がしますが、ファフリにはカイムがよく手を貸していたように、ルーフェンはバアルと相性が良いようです。
それにしても、ファフリは十六で「初召喚成功! やったー!」って騒いでたのに、ルーフェンが成功させたのは、なんと八歳。
いかにルーフェンの心が、汚れていたかが分かりますね( ‾▽‾)
その後、サミルさんのところにルーフェンは送られるわけですが、その時の王宮は、大混乱だったと思います。
家臣たち「え? 息子だよね?」
シルヴィア「違いまーす」
家臣たち「まじか、え、じゃあ王宮に入れない方がいい?」
エルディオ「いや次期召喚師やろ」
シルヴィア「違いまーす」
家臣たち「え、どないする? このまま放置してたら死んじまうで」
シルヴィア「息子じゃないでーす」
エルディオ「もういいよ一旦アーベリト送ろ! ヘンリ村ならそっち近いっしょ!」
って感じだったんでしょう。
でも、いくら医療の街だとはいえ、この時のアーベリトは、まだ『リオット病の治療法をでっちあげた説』が浮上していたのですから、あまり信用されていなかったはず。
そんなところに、次期召喚師であるルーフェンを、普通送りますか? 送りませんよね。
多分、この時点で既に、バジレットやエルディオは、ルーフェンがアランの子、つまりサミルさんの甥であることに、気づいていたんだと思います。
アーベリトを王宮から遠ざけたのも、本当に「やぶ医者め! どっかいけ!」と思っていたんじゃなくて、シルヴィアから離した方が良いと考えてのことだったんじゃないでしょうか。
本当にやぶ医者だと思ってたなら、その後、シュベルテがアーベリトに慈善事業の資金援助を続けてたって言うのも、おかしな話ですしね。
多分、この時からもう、シルヴィアに勝ち目はなかったんです。
シルヴィアの言い分が、おかしくなってたのは火を見るより明らかでしたし、惑わされてた周りの連中はともかく、バジレットとエルディオは最初から、シルヴィアを陥れるつもりだったのです。
怖いですね、色々と。
サミルさんに関しては、なんかもう、良い人すぎてため息出ます。
イケメン枠は何人かいると思いますが、銀竹は、あと四十年くらい歳をとっていたら、迷わずサミルさんに求婚します。
いや、まあ銀竹の好みなんてどうでもいいんですが(笑)
とりあえずここでサミルさんに出会っていなかったら、ルーフェンもどうなっていたか分かりませんね。
見事、王宮入りを果たしたルーフェン。
シルヴィアと初対面して、早速「この女なんかやべえ」と直感で感じとります。
名前もつけてもらいましたね。
ルーフェンは、ヘンリ村での呼名は別にあったんだと思うんですが、当時はまだ子供で、「俺のこと食い殺そうとしたヘンリ村での家族、正直いや!」って気分だったので、その時の名前は捨てました。
新しくつけられた名前も、ルーフェン(奪う者)って、なんか微妙ですけどね。
ちなみにルーフェンって、異様に記憶力が良い設定です。
ガラドに年齢を尋ねられて、生まれてから今まで迎えてきた冬の数で「八歳」と答えちゃったり、リオット病の文献を、一度読んだだけで丸暗記してたのは、その設定故です。
羨ましいですね……!
まあ、つらいことも忘れられなさそうなので、なんとも言えないところですが(笑)
†第一章†──索漠たる時々
第一話『排斥』
さて、一気にルーフェンが十四歳になりました。
思春期というか反抗期というか、色々こじらせて、とりあえずツンツンしてるルーフェンです。
侍女のアンナとか、弟のアレイドとか、案外優しくしてくれる人は周りにいたんですが、ルーフェンはそれに気づけずにいます。
イヤイヤ期というやつでしょうか(違)。
早く周りが見えるようになるといいですね。
ちなみに、晩餐会で出てきたハーフェルンのご令嬢ロゼッタは、今後も結構出てきます。
ブルネットの美人さんです。
後にも先にも、ルーフェンに近づくことに一番成功したのは、彼女なんじゃないかなぁと思います。
第二話『再会』
イシュカル教徒の過激派集団、サンレードを焼き討ちしました。
ミストリア編では、召喚師一族と肩を並べて、騎士団まで束ねているイシュカル教会ですが、サーフェリア編のこの時点では、まだ大した権力は持っていません。
最近勢力を拡大しているものの、まだまだ世間的には「召喚師一族を批判する困った奴ら」くらいの認識です。
サンレードの人々を殺し、ルーフェンは初めて、自らの意思で召喚術を使ったことになります。
国王エルディオに脅されてやっちまったわけですが、まあ、辛いですよね。
十四歳で大量殺人なんて、正直頭おかしくなると思います。
結果、ルーフェンは引きこもりになるわけですが、そんなときに現れた救世主は、やはりサミルさん。
彼と話したことで、ルーフェンは、初めて自分の意思でやりたいと思えることを見つけました。
『サミルさんのために、アーベリトの財政難を救う』
人間、目標があると頑張れるもんです。
ところで、ルーフェンがアレイドに「地理とか経済学の教本貸して!」と頼んでいますが、闇の系譜(サーフェリア)の世界に、いわゆる“学校”というものはありません。
平民階級以下の国民は、基本的に農業やってますので、文字の読み書きもできない人が多いです。
一応、宗教に属している者は、身分に関係なく、教会等で読み書きを習うこともできますが、「王都シュベルテに行って本格的に商売やります!」という人以外は、勉強はせずに、親を手伝って働いている子が多いです。
ただ、貴族階級以上、もしくは、爵位がなくてもそこそこ名の知れた商家・職人階級の者であれば、お金があるので、個人的に家庭教師を雇ったり、子供を私塾(大規模なものも有り)に通わせたりしています。
あとは、職業によって専門的な知識が必須なものもあるので、そこは場合に寄りけりです。
また、騎士団や魔導師団に入ると、武術や魔術はもちろんのこと、基礎的な教養は叩き込まれます。
言わば、騎士団・魔導師団が一番学校に近いのかもしれませんね。
これに関しては、ミストリアも同じです。
ミストリアは、サーフェリアに比べれば遅れている点が多いですが、ユーリッドなんかも兵団に所属していたので、ある程度の教養は身に付けています。
ただ、騎士団や魔導師団に入れる実力があるなら、身分に関係なく勉強できますが、そもそも騎士団や魔導師団に入るには、入団試験で相応の実力(つまり戦える)を見せないといけません。
となると、やはり子供のうちから戦い方を教わっている必要がありますし、そもそも武具や魔法具を自力で揃えられる財力がないといけないので、必然的に騎士団や魔導師団に入るのは、そこそこお金のある家の人が多くなります。
「武具に頼らずとも俺は強い!」って人なら、貧乏な田舎者でも入団可能ですけどね(^^)
第三話『曙光』
オーラントさんが出てきました。
この話から、リオット族の物語が始まります。
全く重要な設定ではないのですが、オーラントさんがお買い物をするシーンで、ミストリア編では詳しく語られなかった、お金が出てきますね。
サーフェリアでの通貨単位は、『ゼル』。
大体、銅貨一枚=一ゼル、銀貨一枚=一万ゼル、金貨一枚=十万ゼルくらいの価値があります。
現代の言葉で言っちゃうと、金貨は大体一枚3〜5g、直径は16mmほど。
十万ゼルの価値があるのに、金貨軽すぎじゃない?と思われるかもしれませんが、サーフェリアでは、金銀・鉱物はかなり高価!(だからルーフェンの、採掘に役立つリオット族を王都に引き戻すって言う作戦は、成功すればかなりの儲け話になるのです。)
故に金貨でも、金含有率が100%というわけではなく、銀や銅が混ぜ足されているので、この程度の重量になっています。
ノーラデュースから帰還した後、ルーフェンがリオット族の治療の前金として、サミルに一億ゼルどさっと渡していますが、これも計算すれば大体3〜5㎏ほど。
持ち歩けちゃう重さなんです。
ちなみにサーフェリアでは、基本的に騎士団・魔導師団が国庫(銀行)代わりです。
戦力の中枢なので、お金を保存しておく場所として、一番安全なんですね。
騎士や魔導師を含め、王宮に仕えている者への俸給は騎士団・魔導師団から払われていますし、預けるのも同様です。
あとは、比較的宗教に寛容な国なので、教徒(平民)たちは、各教会に預け、教会に財産を寄進することで生活を保証してもらっている者もいました。
貧民層の場合は、貯金するより借りることが多かったりするので、莫大な資金力をもつ教会が、資金の貸付を行っていたりもします。
まあ、高利貸しもいるので注意が必要ですが(笑)。
一応金融業者も存在しましたが、それはある程度身分がないと利用できません。
何があるか分からない世界ですので、平民は基本的に、その日に稼いだお金はその日に使いきっていました。
更に余談ですが、ミストリアでは、サーフェリアほど貨幣制度はしっかりしていません(笑)
本編では描きませんでしたが、山奥で狩りをして、自給自足で暮らす獣人も多いですし、そもそもお金を使わない者もいます。
王都ノーレント外では、一握りの富裕層が、宝石とか土地として財産をため込んでいるくらいです。
お金が必要なときは、それらを換金して使っていました。
ミストリア編の第二章、第二話のあたりで、トワリスが装飾品をそのままお金として握らせているのを見て、ユーリッドが「さてはこいつ、王都外から来たよそ者だな?」と見破っていたのは、そのため(換金していなかった)です。
また、この話では、移動陣についても出てきますね。
ミストリア編でも重宝した、この移動陣──。
オーラントさんは気づいていますが、実は時を操る禁忌魔術の一種です。
本来は、悪魔バシンを使役するサーフェリアの召喚師が使える(この能力がある別の悪魔もいますが)、いわゆる瞬間移動の能力なのですが、大昔に、リーヴィアスという召喚師が、移動陣を敷くことで、膨大な魔力さえ使えば、一般の人間でも行使できるようにしました。
ここで何が言いたいかというと、移動陣という禁忌魔術の大元が、悪魔召喚術であること──つまり、召喚師一族は禁忌魔術を保有し、かつ悪魔召喚自体が禁忌魔術であるということ。
そして、古に使用を禁じられたはずの禁忌魔術が、そうとは知られずに、未だに使われてしまっているということ──です。
この二点に、ルーフェンはまだ気づけていません。
オーラントさんは、シルヴィアとのやりとりで勘づき始めましたが、その記憶は消されてしまいました。
なんだか悪い予感がしますね!
- Re: 〜闇の系譜〜(サーフェリア編)上【完結】 ( No.303 )
- 日時: 2018/02/28 13:44
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: C8ORr2mn)
- 参照: https://twitter.com/icicles_fantasy/status/926017968789528576
〜あとがき〜③
第四話『探求』
医療の街アーベリトの過去、そしてリオット族との確執が明らかになってきました。
ルーフェンは、遺伝病の治療法の需要を再び上げることで、アーベリトの財政難を救おうと動き出します。
伏線にもなっていないような、私のちょっとしたこだわりなのですが、サミルの兄アランについて、アーベリトの女性は「研究熱心で、睡眠や食事の時間もほとんど摂らずに……」と説明しています。
これ、次話でリオット病について調べているときの、ルーフェンののめり込み具合を、意識して書きました(笑)
寝食も忘れて図書室にこもっていたルーフェン。
この一直線具合は、父親譲りだったんですね。
第五話『壮途』
リオット病の発症率が、ノーラデュースで再び高くなった原因を、ルーフェンが突き止めました。
この話では、魔術ではなく、科学に近いような話題もちょこちょこ出てますね。
ここで、ちょいと文明の進み具合についてお話ししますが、そもそも、遺伝病の治療法なんてものがあるくらい進んでいるのに、闇の系譜の世界には、電気とかないの?なんて思った読者さんもいるのではないでしょうか。
ここからは、完全に私が作っている設定なので(全部作ってますが)、多少疑問を感じる部分が出てきてしまったら、申し訳ないです(笑)
ただ、一応私なりに矛盾がないように考えてますので、解説させて頂きますと、まず、医療技術に関しては、アーベリトが異様に進んでるんですよね。
作中でもご説明していますが、遺伝病の治療なんてアーベリトにしか出来ませんし、その他の街の医療技術は、そこまで進歩していません。
アーベリトの医療魔術だけが、特別発展しているだけなので、サーフェリアの文明レベル自体が、めちゃくちゃ高いわけではないのです。
加えて、闇の系譜の世界は、やはり争い中心の世界なわけですから、必然的に医療技術は他の技術よりも需要があり、研究者も沢山存在していると考えられます。
これらのことを鑑みて、遺伝病の治療法くらい、あってもおかしくないかなぁと思い、本編に取り入れました(^^)
……いや、まあ、大昔からリオット族の話は書きたかったので、深く考えずに取り入れた上で、後から理由付けしたに過ぎないのですが(笑)
話を戻しまして、じゃあ他の文明レベルはどれくらい進んでるの?ってことなんですが、まず、闇の系譜の世界に、電気はありません。
というか、魔術があるので、わざわざ研究する必要がありません。
サーフェリアより遅れてるはずのミストリアにすら、魔力灯(光源が魔術のランプ)なんていう便利アイテムがありました。
電灯なんてものがなくても、光の魔術を使えば、簡単に光源が確保できますし、電気自体があまり必要とされてはいないんですね。
でも本編だと、光の魔術じゃなくて、燭台とか松明使ってるよね?と思った方には、細部まで気づいてくださってありがとうございますと、お礼を言います。
はい、作中で燭台や松明を使っている場合が多いです。
その理由としては、結局のところ、魔力量の多い人間が多数派ではないからです。
エリート魔導師である宮廷魔導師ですら、武器と魔術を併用して使っています。
人間は、莫大な魔力を有する種族ではないのです(すごいのは精霊族)。
それを踏まえた上で、ずーっと光源として光の魔術を使うとなると、ただですら大して魔力量ないのに、その間、絶えず魔力を消費し続けないといけません。
でも、燭台や松明を使えば、一瞬火の魔術を使うだけで、しばらく明るくなります。
ルーフェンみたいな召喚師一族とか、王宮に仕えているような凄腕の魔導師など、一部の上層階級の者なら、ずっと光の魔術を使い続けるくらい出来るのでしょうが、一般にそんな芸当ができる人間はいませんし、仮に使えても、魔力を消費し続けることが得策とは言えません。
平民階級以下の大半の国民は、そもそも魔術を学んでいないわけですしね。
結果、まだまだ一般に使われているのは、燭台や松明、ということになるわけです。
ただまあ、いずれ貧民層の中から天才が現れて、貧乏ながらに上手く研究進め、闇の系譜の世界にも電気が出てくる……なんて展開も、十分あり得ることだと思いますけどね!(銀竹は科学技術が入ってくるのはあまり好きじゃないので、出す予定ありませんが。)
ぶっちゃけ、この世界に魔術が存在しなければ、「暗いと不便だし、電気開発しようぜ!」なんて動きが、もっと早くに出ていたことでしょう。
一見科学より、魔術のほうが便利そうですが、ある意味、闇の系譜の世界は、魔術があるせいで遅れていると言えます(笑)
他にも電話とか、カメラ・ビデオなんていう科学の産物が、世の中には存在しているわけですが、闇の系譜の世界では、その辺も魔術で事足りていることにしています。
正直、本編に関係ないので、そこまで詳しく決めてるわけではないのですが、ルーフェンが別室のアンナを呼んだように、離れた相手と連絡を取る風の魔術とかありそうですし、水の魔術で投影して云々、とかすれば、カメラやビデオ的な機能を実現させることも可能そうです(笑)
結局のところ、魔術がある世界に科学まで導入しちゃうと話がややこしくなるし、闇の系譜の本筋はそこではないので、本作では、魔術で大抵を補っていることにしています。
医療魔術に関しては、よくある『手をかざしたらファァッって光が出て、骨折とか傷とかとりあえず治る』みたいな曖昧なのは個人的に嫌だったので、ちょっと科学的な説明の仕方をしたのですが、闇の系譜の世界では、医療も根本は全部魔術!
例えば凍結保存とかも魔術でやってますし、言っちゃえば、サミルさんも『医療魔術に特化した魔導師』ってことなんですね。
ちなみに、リオット病とかは完全に創作した病気ですが、ガドリアのモデルはマラリアです。
ミストリア編の奇病も公害病ですし、参考にしてるものがある設定もそこそこあります(^^)
あと、時計とかどうなの?って前に聞かれたのですが、時計はあります。
ありますが、一般に出回ってはいません。高価なものだからです。
平民たちはまだ、明るくなったら起きて、暗くなったら寝る、っていう生活をしていますし、時計を持っている上層階級の人間も、現代社会みたいに分刻みのスケジュールできりきり働いてるかっていうと、そうでもありません(笑)
大して重要じゃない上に、そこまで詳細には決めていない設定を長々申し訳ありませんが、闇の系譜の文明は、まあこんな感じなんだなぁと、思ってください。
- Re: 〜闇の系譜〜(サーフェリア編)上【完結】 ( No.304 )
- 日時: 2018/03/02 19:37
- 名前: 銀竹 ◆4K2rIREHbE (ID: C8ORr2mn)
- 参照: https://twitter.com/icicles_fantasy/status/958631006621261825
〜あとがき〜④
†第二章†──新王都の創立
第一話『奈落』
ルーフェンが無理矢理オーラントを巻き込んで、ついに奈落の底へ。
なんだかんだいって付き合ってくれるオーラントさんは、とっても良い人ですね(笑)
彼は宮廷魔導師ですし、飄々としてはいますが、魔術の腕も超一流です。
基本がルーフェンとか召喚師一族を主軸に話しているので、霞みがちですが、宮廷魔導師っていうのは、魔導師の中でも実力のある者を選出した、エリート中のエリートなんです。
宮廷魔導師になれば、貴族と同等の地位に上がれますし、場合によっては領地をもらえたりもします。
オーラントさんは、実はすごい人なんです。
ルーフェンが姿をくらましたせいで、王宮は大騒ぎです。
その混乱に乗じて、イシュカル教会が怪しく動き始めました。
ミストリア編では、イシュカル教会の大司祭として登場するモルティスさん。
しかし、サーフェリア編ではまだ、イシュカル教の勢力がそこまで強くないので、モルティスは、事務次官として王宮に仕える傍ら、陰でイシュカル教会と内通している立場にあります。
そして、召喚師一族を失脚させる機会を伺っているんですね。
うさんくさい奴です。
第二話『落暉』
ようやくリオット族と接触することができたルーフェン。
しかし、ノーラデュースから救出してあげようというルーフェンの提案に対し、リオット族は頷きません。
地上に出ても、また苦しみを味わうことになるだけ。
それなら、この地下の世界で滅んでいく方が良い。
これが、リオット族たちの出していた答えでした。
この現状を見たルーフェンは、やはり、ヘンリ村でのことを思い出していたんじゃないかなぁと思います。
だからこそ、最初は「アーベリトのためにリオット族を利用する!」くらいの心持ちでいたのかもしれませんが、だんだん、リオット族のことも助けたくなってしまったのでしょうね。
リオット族の話は、ハインツくんも出てくるし、オーラントさんとの仲も深まるので、個人的にすごく書きたかったお話でした。
第三話『覚醒』
ルーフェンが、なんとかリオット族の説得に成功しますが、同時にイグナーツ率いる魔導師団がノーラデュースに突入してきて、ややこしいことになりました。
ここには、イシュカル教会も介入しているので、余計に面倒ですね。
長きに渡り燻ってきた憎悪、熾烈な争い。
ルーフェンは、召喚術を使ってなんとか場を納めましたが、結末はやはりハッピーエンドという感じではないです。
魔導師たちとリオット族、双方互いに己の正義のために闘ってきたわけですから、どちらも正しく、どちらも誤っていたのだと思います。
この話では、ルーフェンも「憎しみ合いはやめよう」とか、「生きたいと思うなら生きればいい」とか、いわゆる綺麗事を連発してますね。
間違ったことは言っていないんですけど、やはり子供だなぁという感じです。
いずれ、そんな簡単に行かないってことを思い知って、イグナーツの言葉の重みも理解していくことでしょう。
そして結果的に、ファフリたちに対して「綺麗事ばっかで反吐が出るね」なーんてひねくれたことを言う、ミストリア編のルーフェンが完成するわけです(笑)
とりあえず、今回のMVPは、先にごめんねが言えたラッセルじいさんです!
まあでも、暗い話ではありましたが、この話のおかげで、ルーフェンは召喚師を継ぐ決意をします。
諦め半分、あとは、アーベリトとリオット族という守りたいものができたので、召喚師としての力を持っておくのは悪くないかもしれない、と思い始めたのでしょう。
サミルさん、オーラントさん、ラッセルじいさん、このじじい三人組がルーフェンに与えた影響は、かなり大きかったんではないでしょうか。
第四話『疑惑』
始まりました、シルヴィア無双。
王位継承者の大半があの世行き。
オーラントさんまで倒れて、とにかくシルヴィアさんがやべえっていうお話です。
この辺の展開は、王族も沢山出てきてちょっとややこしいので、読者さんに分かりやすくお伝えできているだろうかと激しく不安なのですが……大丈夫ですかね(;>_<;)
一応相関図もありますので、「え、誰が誰の子供?」って混乱したら、そちらをご確認いただければと思います(五分でわかるまとめに載せてます)。
また、ルーフェンの出自についても明らかになりましたね。
同時に、完全に敵視していたシルヴィアの心の内も少しずつ分かってきて、ルーフェンは戸惑い始めます。
バジレットとエルディオの、体を張ったシルヴィア没落作戦にも、いまいち乗り気じゃありません。
召喚師一族としての運命を強いられ、また、優秀な次期召喚師を産めという周囲からの圧力に耐えてきたシルヴィア。
一方で、召喚師の地位を追われ、居場所を失うことを恐れたシルヴィアは、唯一の理解者であった侍女のアリアに、ルーフェンを託します。
なんとかルーフェンを遠ざけるも、結局、彼は次期召喚師として王宮に戻ってきます(その時のシルヴィア視点の話は、実は外伝に載せてたりもします)。
最愛のエルディオには振り返ってもらえず、アリアも既に王宮にはいない。
ルーフェンには、サミルやオーラント、リオット族の皆がいましたが、シルヴィアには、もう誰もいなかったのです。
第五話『創立』
正式に召喚師に就任し、バジレットと手を組んだルーフェン。
悩んだ末に彼は、シルヴィアを見放すことを決意します。
それこそルーフェンにとって、シルヴィアという存在は、本当の意味でお互いを理解できる唯一無二の相手だったわけです。
それなのに、息子じゃない、息子じゃないの一点張りだったシルヴィア。
最後の最後に、「貴方は私の息子だ」と言われても、ルーフェンの心には何も響きませんでした。
ルーフェンの心に響いたのは、サミルさんの言葉でしたね。
前話から、ルーフェンは親子関係で色々といじけていました(笑)
シルヴィアを哀れむ気持ちも出てきた一方で、やはり召喚師一族の血の繋がりからは逃げられないのだと悟って、絶望してみたり。
オーラントとジークハルトを見て、本物の親子って良いなぁと羨ましく思ったり、ちょっと嫉妬してみたりもしました。
結果的に、他人のサミルやオーラントを巻き込んじゃいけないと、周囲と一線引くことにしたルーフェンでしたが、「血の繋がりなんて関係ない」というサミルさんの言葉を胸に、彼を「お父さん」と呼ぶ孤児院の子供たちの話を聞いて、思わず泣いてしまいます。
感動の涙だったのか、哀しみの涙だったのかは、なんとも言えないところ。
どちらにせよ、血の繋がりだとか召喚師一族だとか気にせずに、想ってくれる相手が、ルーフェンは欲しかったんでしょう。
サミルが実は叔父だったことが判明してますが、まあルーフェンにとってもサミルさんは、きっとお父さんみたいなものですね。
ルーフェンが泣くこの場面は、サーフェリア編で書きたかった場面の内の一つです。
ルーフェン、なんだかんだ言って、王宮入りしてから泣くの初めてなんですよね。
オーラントさん振り回してノーラデュースに突撃したり、侍女のアンナちゃんをたぶらかしたり、色々やらかしてるルーフェンですが、“声をあげて泣く”という十四の少年らしいシーンも入れたかったのです(^^)
もし、召喚師一族でなければ、ルーフェンだってアーベリトの孤児院に入って、サミルさんのことをお父さんと呼んでいたかもしれませんね!
さて、なんやかんやで遷都が決まり、ハーフェルンvsセントランスvsアーベリトの、王都争奪戦が始まります(笑)
御前会議のシーン、なんと15000字!
銀竹的には、こういう腹の探り合いとか言い争いの場面って好きなので、楽しかったのですが、読者さんからしたら、こんなおっさんたちの言い争いを15000字も読むなんて、つまらないだろうなぁと思ってました。
ごめんなさい、サーフェリア編は好き勝手やります(^_^;)
そういえば、まだ国と街に関しては言っていなかったと思うのですが、闇の系譜の世界には、ミストリア、サーフェリア、ツインテルグ、アルファノルの四つの国がありますよね。
この四国、一つ一つがかなり巨大なので、闇の系譜においては国=大陸、街=国レベルだと思って下さい(笑)
つまり、サーフェリアにおいて言えば、実質統制しているのは王都シュベルテですが、その支配下に入っていない街も沢山ありますし、同じ国内でも、街によって違う文化や体制が築かれていたり、完全に独立して発展しているところも存在するわけです。
だから、本編中に度々、街同士が内乱を起こして云々っていう話が出てきますが、それは現代で言う国同士の争いに匹敵する規模にもなりかねないのです。
故にバジレットは、極力内乱は起こそうとはしません。
シュベルテやハーフェルン周辺の、比較的裕福な街は良いんですが、その他の街同士が、宗教関係のいざこざや領土・資源の奪い合いでドンパチやるのは、サーフェリアじゃ珍しいことじゃないので、それで難民受け入れを積極的に行っているサミルさんは、頭を抱えてます。
そして、先程も言った通り、国=大陸レベルですから、それこそ国同士、つまり召喚師同士がぶつかったら、大変なことになるわけです。
四国は、大陸が分断されてからはほぼ無干渉を貫いてますが(かつては陸続きだったので、言語も通じますし交流ありましたが)、ミストリア編で、サーフェリアとミストリアの関係がちょっと危うくなりましたよね。
その際にルーフェンが焦ったり、リークスが開戦しようとしなかったのは、国同士の戦争なんて始めれば、悲惨なことになると分かっていたからなんです。
最後の最後に、いよいよスレインさんが出てきました(名前を言っちゃう)!
ミストリアのロージアン鉱山から逃げてきたスレインさん。
この辺のハイドット事件との関連や、アーベリトの歴史云々は、年号を合わせるのがとにかく大変でした(笑)
ともあれ、スレインさんをようやく出せたので、後編からはトワリスが出せます(*^^*)
やったね!
サーフェリア編・上のあとがきは、この辺にしておきます。
長々とありがとうございました!
後編もよろしくお願いします\(^o^)/
それでは、完結とさせて頂きます!