複雑・ファジー小説

Re: 魔が玉 (改) ( No.10 )
日時: 2015/06/28 11:59
名前: ななか (ID: enKf/rbe)

コン

コン

…コン



竹が石を打つ音が聞こえる。その音とかぶるように聞こえる笛。
目を開けると、白い髪をして、淡い灰色の和服を着ている人がいた。
縁側に座り、まるで風と一つになったのかの様に笛を吹く。集中しているのか、こちらに気づかない。
私は薄い布団の上に寝かされていた。ひゅっと風が吹き、布団のはしをめくり上げ、白髪の人の顔を露わにした。
年齢はきっと私よりも5歳くらい上。性別がわからないその人はとても私には美しく思えた。きっとこの人が私を布団に入れてくれたのだろう。

目を閉じて、考える。
私はついさっきまで海にいた。8月の暑い、焼けるような熱波の下で、物思いにふけっていた。すると、突然グラリと体が揺れて……。
その後は覚えていない。気がついたらここにいて、今目が覚めた所だ。

目を開けて、横目に周りを見る。
何かがおかしい。
私はどうやら日本家屋の何処かの部屋に寝かされているらいしい。すぐ横には縁側があり、横向きに白髪の人が座っている。奥には庭があり、藤の花が咲き誇っていた。

でも、今日は8月であるはずだ。
それに、私は海にいたはずだ。
何かがおかしい……

『起きていたのか。』

気がつくと、笛の演奏が終わり、
笛の人がこちらを向いていた。

次へ >>11