複雑・ファジー小説
- Re: 魔が玉 (改) ( No.11 )
- 日時: 2015/06/28 15:24
- 名前: ななか (ID: en4NGxwI)
「あの…。ここは何処ですか?私たしか海にいたのですが?」
体をゆっくり起こす。
笛の白髪の人は少し寂しげな顔をしながら、
『ああ、私もだ。』
と呟いた。
『私の名前は葵(あおい)。君は?』
「私は夏菜(ナナ)です。」
『そうか。あちらで少し話をしよう。立てるか?夏菜。』
立ち上がる。まるで深い眠りから冷めたように、節々の関節がぽきぽきと唸りをあげる。布団を片付けようと思ったが、このままでいい、と葵さん……男の人の服を着ているからきっと男の人だけども性別も年齢もわからないから一応さん呼び……に言われた為、軽く掛け布団を4つ折りにして敷き布団の上に置き、葵さんの後を追った。
襖を開けると囲炉裏(いろり)の部屋があった。囲炉裏の横に座ると、葵さんは私に近くに座る様に促した。
『ん。どこから話せばいいかなぁ。夏菜はタイムトリップを信じるかい?』
タイムトリップ。あの某青い狸の様なロボット(猫)がタイムマシンでやっているあれ。
夢のあった昔は100年後にはきっとタイムマシンができ、タイムトリップが出来ると思っていたが、さすがにこの年15にもなって信じてはいない。
『信じていない顔だな。なら、現実を教えてやろう。ここは江戸時代だ。君はこの時代にタイムトリップしてしまったのだ。』
ん?
いやいやいやナイナイナイ
「何を言ってるんですか〜。そんな、タイムトリップなんてするわけないではないですか〜。」
『だといいがな。まあ、夢だと思うならほっぺつねりながら外に出てみろ』
立って、外に出る。この家は四方八方にベランダの様な窓があり、どこからでも出られるようになっているらしい。
先は急な階段になっているらしく、ほっぺをつねりながら下を覗く。
眼下に広がっているのは、それはそれは楽しそうな街並みだった。立ち並ぶ店々に笑いながら通り過ぎてゆく客たち。店の裏は住居になっているらしく、小さな女の子が洗濯物を干している。ネットが普及し、みんな下やスマホしか見ないで歩いている景色とは打って変わり、とてもあたたかい風景が広がっていた。
しかし、街を歩く人たちや店の人、洗濯物をしている少女達の服装は和服。店は木製二階建てで、間違っても高い建物は無い。(見張り台のようなところはあるが。)洗濯をしている少女達は水を井戸で汲み上げている。
そう、目に見えている景色は教科書に載っている絵そのもの、江戸の街並みだった。
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