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複雑・ファジー小説
- Re: 魔が玉 (改) ( No.15 )
- 日時: 2015/07/08 19:39
- 名前: ななか (ID: enKf/rbe)
【翌日】
『いらっしゃいまし。あら、お久しぶりで』
『ああ、久しいな、お道さん。皆いるか?』
『はいはい、今連れてきますね。そこに座っていてください。』
私は葵さんと割と大きい店に来ていた。
「葵さん、ここは……?」
『ここは呉服屋だ。会ってもらいたい家族がいてな。と言っても、勿論血は繋がっていない。
実は一緒に暮らしている人が他に3人居てな、そいつらはここで働いているんだ。』
『多賀山様!』
店の奥から赤い着物に金糸の入った裕福そうな人がどすどす歩いてきた。
『話を合わせろよ。』
葵さんは私にそう言うと、『お久しぶりです、府屋様。』とその府屋という男に向き直った。
『みな、ちゃんと働いておりますか?』
『ええ、とてもいい子達です。多賀山様。おや、隣のその子は?』
府屋がこちらを見る。
『これは、田舎に住む親戚の姪っ子で、つい先日上京して来たのです。』
葵さんが代わりに答える。
『今日はこれに服を仕立てていただこうと。』
その時、不意に青年が横にぶつかった。
「あ、すみません。」
『失礼いたしました……ってミュウじゃん!』
その青年は葵さんを指差しながら驚きの声を上げた。
『あ、修二(しゅうじ)か。ちょうどいい。この子を採寸してくれないか?』
『はあい。あ、親方、失礼いたしました。』
青年が府屋に謝る。そして、葵さんに何やら耳打ちした。
葵さんがコクコクと頷く。
『それじゃ、採寸したいから来て。』
そう言って修二と呼ばれた男に引っ張られ、私は店の奥の小部屋に入った。
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