複雑・ファジー小説
- Re: 【影乃刃】 シャドウ・ブレイド ( No.1 )
- 日時: 2014/10/12 19:12
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: vOrEmgsE)
第壱章 始まり、そして少女は新たな時代の到来を告げる
朧月。
淡い斜光の影。
他に人影は皆無。
冷たい路道にひとりの少女をありありと映し出す。
「どうやら、囲まれてるようだな」
漆黒の、腰元まで流れる麗美な長髪の少女は足を止めると、周囲に立ち込めた複数の視線を感じ取った。
まるで濃密な霧のように、ねっとりと自身の四肢にまとわり、絡みつく。
「この気配・・・ふむ。『彼奴ら』の手の者、という訳ではないか」
濃い紫、限りなく黒色に近い装束。
サムライが羽織るような裃衣の上着の袖を軽く振ってから、少女は少し眉を顰め切れ長の瞳を光らせる。
膝上が覗く短い着物風のスカート。
白いハイソックスから覗く瑞々しくも艶めかしい白磁の柔肌の太腿。
おもわずその場で押し倒し、穢してしまいたくなるほどの壮麗かつ見目麗しい美少女。
照らす月明りがなんとも幻想的に映えさせる。
しかし、少女の美しさとは対象にひときわ際立つ左腰に添えられた太刀の存在。
それの柄頭に軽く手をかけ、凛と立つ姿は、何者をも寄せつけない力強さに満ちている。
「ぐへへへ・・・。嬢ちゃん不用心だな。こんな時間にこんな場所をうろつくなんてよ」
打ち捨てられた廃材や投棄された重機の影から姿を現す者たち。
その外見は明らかに異様で常人とはかけ離れた異形。
躰の至る所から機械片を剥き出し、金属の骨格や鎧のようなものが融合していた。
サイボーグだ。
それも正規に機械化した訳では無く、闇医者や違法技師によって施術を施された無法者たち。
「俺たちが幾らでもタップリ遊んでやるぜ〜」
半機械の装甲で覆われた顔をニヤニヤさせたこの集団のリーダーらしき男と仲間は小柄な少女を取り囲む。
下卑た薄ら笑いを浮かべる機械化されたサイボーグの男たち。
どうやら少女に対して不埒な行為が目的のようだ。
すると、
『始末するか、幽羅よ』
何処からともなく響く声。
「ああ」
その声に名を呼ばれた少女、幽羅は頷く。
同時に少女から放たれる凄まじい殺気。
「!?」
場を包む濃厚な殺気に当てられたのか、硬直し微動だに出来ない男たち。
その瞬間、一直線に煌めき奔る光の帯。
一閃。
それは空を切り、周囲を取り囲む男たちの屈強な機械の身体を撫でるように通り過ぎた。
何が起きたのか。
少女の右手、いつ抜き放ったのか蒼白い輝きの刀身を晒す太刀が握られていた。
「何をしやがっ————」
男が喋ろうと口元を動かそうとした時、
少女を囲む男たちが無数の肉と機片となって千切れ飛んだ。