複雑・ファジー小説
- Re: 【影乃刃】 シャドウ・ブレイド ( No.2 )
- 日時: 2014/10/12 22:02
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: SkADFG9E)
血煙りと血飛沫。
文字どうり木端微塵。
大地が赤と黒の捨物に染まる。
少女の足元には先程、人を形造ったものの成れの果てが無残にも転がっていた。
『とんだ雑魚だったな、幽羅。肩慣らしにもならん』
少女が携えた蒼い刀身の太刀、それから声が響いてくる。
肉とガラクタの残塊となったサイボーグの集団、彼らが決して弱い訳では無かった。
改造強化された鋼の肉体は機銃の掃射をも物ともせず、そのパワーは容易く装甲車両を叩き潰すほどのもの。
改造施術に使用された機器は正規軍隊の純正品とは性能は比べるべくもないが、基準外義体の寄り合わせでも軍機兵と渡り合える程の力は有していたのだが・・・。
「所詮はまがい物。『我ら』とは根本的にスペックが異なるのだ、絶影」
そう言って幽羅は喋る太刀『絶影』を一振り露払いし、腰に差した黒塗りの鞘に鍔鳴りの音を木霊させ納めた。
『嗚呼、剛の者は何処か・・・。この躰に変わりて幾星霜。我、求めたるは至高の仇敵・・・』
鞘に納められた太刀は、さも無念そうに呟く。
「そう嘆くな、絶影。いずれ彼奴らと刃交える刻が来る。その時存分に振るってやろう」
幽羅が慰めるように太刀を撫でる。
『・・・我は寝る』
いまだ戦いの熱が冷めやらぬ猛々しい氣を宿す太刀は夜の帳のような鞘の中で眠りにつくように大人しくなった。
柔らかく微笑する幽羅。
だが、視線は一瞬で鋭いものに変わる。
そう、いずれ戦いの時は訪れる。
必ず。
戦わねばならない。
己の、復讐のために。
雲の波間が晴れ、満月がその琉貌を露わにし、月光が幽羅を冷たく照らす。
病的なまでに白く、陶器を思わせる美しい肌。
艶やかに輝き彩る漆黒のストレートロングヘア。
まるで冥界から抜け出た幽鬼。
命持たぬ人形のごとき美貌。
幽羅は己の白すぎる腕、掌を視る。
「我は一刃。我は斬鬼。この一刀にすべてを懸ける修羅・・・」
再び月が雲海にその身を隠し暗く影を地上に落とす。
次に月明かりが照らすと、すでにそこには少女の姿は無く、物言わぬ骸が物悲しく横たわっていただけだった。