複雑・ファジー小説
- Re: STORM[番外編①UP!] ( No.121 )
- 日時: 2015/01/16 00:56
- 名前: ブラッドオレンジ (ID: 4pf2GfZs)
「はぁっ!」
まずは老体に躊躇無く回し蹴り。だが、蕎川は外見からは想像もできないフットワークでそれを避けてみせる。
そこから蕎川は裏拳で道郎の拳銃を弾き、反対の手を下から回し顎にアッパーカットを決めた。道郎はその衝撃で後ろへ仰け反り、体制を立て直そうとはせず、むしろその勢いを利用して後方へ宙返りした。
少し距離を置いたものの、蕎川は好機を逃すまいと攻めを続ける。
どうやら拳中心の攻撃を得意とするらしく、武器を取り出す様子は見られない。
(分かってはいたが…、予想以上だな)
STORM内でも随一の格闘センスを誇る道郎でさえ、押され気味になるほどである。流石は幹部といったところだ。
道郎が蕎川の攻撃に対し防戦を続ける中、二人はフードコートの外まで移動してきていた。
蕎川の表情には微妙に疲れの色が見えてきた。サイキックというのは通常の場合、異能に付随して身体能力が上がっている場合が多い。それでもあくまでミステッィクのように人間としての限界を超える事は出来ない。長時間戦いを続ければもちろん体力は消耗していく。
「ふんっ!!」
精一杯に蕎川が地面を踏み込むと同時に、影から大量の針が発射された。いくつかの針は道郎を貫いたが、ほとんどは避けられ、別の方向へ飛んでいく。
狙いから外れた針が刺さった柵やガラスがまるで魔法のように消え去っていく。
(なるほど。生物以外に対しあれは作用するのか)
たいした事の無い能力に思えるが、亮二のバリアーを貫いた事例も合わせると、能力そのものを打ち消しかねない危険なものでもある。
数分経った頃には、蕎川の攻撃は完全に能力中心となっていた。
接近戦に疲れたので、一気に畳み掛けようとしているようにも見える。おそらくだが、状況は今、道郎に有利な方に傾いている。
「どうした蕎川」
十分な間合いを確認してから、道郎は一旦動きを止める。
蕎川もだが、道郎の体力も相当消費してきている
「そんな程度か?俺はまだやれるぞ」
「ずいぶんと甘く見てくれますな」
やせ我慢もいいところだ、と心中蕎川をあざ笑う道郎だったが、しかし蕎川はどこか他の事を考えているといった感じだ。
静かに腰のナイフに手をかける。蕎川は油断を見せている。今なら殺れる。
道郎が仕掛けようとしたその直前だった。
蕎川の影から一本の針がまっすぐな直線を描いて発射される。
「!」
危うく道郎の脳天を貫くところだったが、道郎はギリギリでそれを避ける事に成功した。
そして、それと同時にナイフを抜き、蕎川の方向に刃を向け走り出す。
いける、と確信した。